植物コラム1

No.30 ナガミノツルケマン (ケシ科)

2003年 9月

ナガミノツルケマン 北海道から九州の冷温帯の林縁などに生え、高さ1メートルほどになる2年草。全体が柔らかく、なよなよとして他の草にもたれかかる。茎は稜があり無毛。葉は互生して2-3回3出複葉で、小葉は3深裂する。花はややまばらに10個前後つける。
 近県の岐阜県や長野県では、割と普通に見られるが、日本海性気候の強い富山県に入ると、とたんになくなる植物。一昨年、八尾町で県内初の産地が見つかったが、すでに群落は某公園の下敷きとなって数株を残すのみ。富山県レッドデータブック2002には掲載が間に合わなかったが、絶滅危険度は著しく高い。

(太田)

No.28 エビネ (ラン科)

2003年 5月

100431_08.jpg  花茎は高さ30~40cmで、花はややまばらに10個前後つける。花被片と唇弁の色にはいろいろ変異がある。葉は株元から2~3個束生し、地下茎は節が多く連球状である。
 生育地の改変のほか、花が美しいために観賞用の山野草として採取されて生育地、個体数ともに減少しています。さらに、庭にあるものを山に戻すことが自然のためになると思い、それを実行している人もいるために、地域のエビネの血統は大幅に乱れている恐れがあります。
 「野生」植物を護るためには、採らないことはもちろん、戻さないことも意識しておきましょう。 富山県植物レッドデータブック2002から
エビネ(絶滅危惧)

(太田)

No.22 ユキツバキ (ツバキ科)

2002年 5月

ユキツバキ 新潟県の石沢進先生の調査では、ラショウモンカズラとユキツバキの分布域は重ならないことが示されています。利賀村百瀬川でも同様で、百瀬集落あたりがこの境。前者は上流側に後者は下流側に分布しています。

(太田)

レポート:2001年10月20日の野外植物観察会「紅葉探訪」で見られた主な植物

登山を前にミズバショウ観察 小井波から見る夫婦山 じぶんがうつってどうする!
登山を前にミズバショウ観察 小井波から見る夫婦山 自分が写ってどうする!

 場所:八尾町夫婦山 標高900m
 当日は快晴の好天に恵まれ、総勢20人で八尾町小井波から夫婦山を目指しました。男峰(784m)と女峰(740m)の二峰からなり、植生は、稜線の東側斜面ではトチノキ群落やミズナラ・コナラ林、稜線上は弱い風衝植生となっていました。トチノキ林は、自然林に近いものでしたが、昔の人がこの実を採るために、大事に残してきたものだと考えられます。
 男峰は、ごつい集塊岩の岩肌が随所に露出した山でした。発達の悪いミズナラやケヤキの林に混じって、ヒノキが植林されていました。スギ天然木ある展望台は、下が絶壁となったの集塊岩の露頭で、足元にはホソバコオニユリやヒモカズラも生育していました(みなさん、景色に見とれて気付かなかったでしょ)。頂上の見晴らしは、360度遮るものはまったくなく、北アルプスから富山湾、能登半島、医王山方面までばっちり見えたのでした。女峰稜線部は、ブナの風衝林が生育しており、山頂部はヒノキの植林地で展望は利きませんでした。帰路には、うまそうなクリタケも収穫できました。写真は、田中実さんによるものです。

(太田)

レポート:1999年野外観察会で見られた主な植物 

 場所:1.朝日町宮崎鹿島神社社叢林 標高20~150m
 キーワード:植生遷移、極相林、タブノキ林からスダジイ林へ

スダジイ林冠ギャップ 大木が倒れて林冠に穴が開いた。
ここからたくさん光が降り注いでくる。
 ある場所の植物群落は、普通、時間とともに相観が変化していきます。植生は群落の最も上の層を被う植物の性質によっておおまかに区分され、裸地→一年生草本群落→多年生草本群落→アカマツなどの陽樹林→コナラなどのやや陰樹林→シイ、タブなどの常緑広葉樹林へと推移していきます。これを植生遷移といいます。私たちがよく目にするコナラ林やアカマツ林、水田雑草群落、路傍雑草群落など、ほとんどすべての植生は植生遷移途中のものです。
 朝日町宮崎の鹿島神社社叢林は、タブノキとスダジイからなる常緑広葉樹林であることから、植生遷移系列の最後に位置づけられると考えられている植生です。この常緑広葉樹林は、時間が経過しても、個体の入れ替わりはあっても優占する樹種の入れ替わりはめったに起こらず相観に変化がないだろうと考えられていることから、この場所の極相林であるとされています。
 今回観察した常緑広葉樹林内の優占種は、スダジイとタブノキでした。一本のスダジイ大木が倒れた後には、スダジイを含む数種の稚樹が一斉に生長を始めている部分が観察されました。また、社叢林上部ではタブノキ数本の樹勢が著しく低下して枝が落ち林内が明るくなっていました。その部分では落葉広葉樹と常緑広葉樹の両方が生長を始めており、場合によっては一時的に植生遷移が逆戻りして見えることもあろうと思われました。いずれにしても、スダジイ林に向かって遷移が進行しつつあることは確かです。(太田)

 場所:2.入善町杉沢サワ杉 標高3m  キーワード:植生遷移と文化財保護
サワ杉林 サワ杉林は、伏条するスギからなる林です。扇状地末端にあって湧水に涵養されていることが珍しいことから国の天然記念物に指定されています。扇状地全体の区画整理が行われるまでのサワ杉林は、燃料となる杉葉やホウサを拾うためのいわゆる里山として人々に利用されていました。伏条した枝から生長したスギの多くも、昔の人がスギの株数を増やすために故意に枝を地に這わせて増やし育ててきたものです。
 今日の農業生産スタイルの変化、天然記念物指定に伴う人為の遮断によって、サワ杉林は里山としての機能を完全に失い、今は、ただの林となって植生遷移だけが進行しています。洪水で流されたり埋まったりする植生攪乱の危険性さえもほとんどなくなった今日、何も手を加えない「保護」を続けると、人々の生活文化とリンクしていたサワ杉林の様相は失われてしまいます。(太田)

No.6 アジサイ (アジサイ科)

1999年 7月

アジサイの花 梅雨。雨に打たれて咲くアジサイのあの大きな「花びら」が「がくへん」だということは言葉で知っていても、どうしてそうなのと聞かれると困りますね。でも、基本に忠実にゆっくりと見ていけば大丈夫。6月号のリーフレット「アジサイの花」をご参照下さい。

(太田)

No.34 シャガ (アヤメ科)

1999年 6月

シャガの葉は両面とも裏

シャガ  シャガ(アヤメ科)のように葉面を地面に対して垂直に近い状態で立てる植物は、一見、葉の表と裏の区別がつかない。植物形態学で言う葉の「表」は、茎の伸びていく方向に面している側の面、「裏」は茎の伸びていく方向に対して外側の面と定義される。シャガの葉を分解すると、細長い葉が中心線で内折れして、さらに内側の葉を挟む形になっている。したがって、内折れして内側になった面が茎の伸びていく方向に面することになるので「表」、外から見てどっちが表かどうか判断に迷った外側の面は両面とも「裏」と解釈される。

(太田)

No.4 レポート:1999年野外観察会で見られた主な植物 

場所:婦中町吉住ねいの里 標高80m

** この日に覚えたこと **

ハコベ類の区別

  ウシハコベ コハコベ ミドリハコベ
茎の毛 全面的に 一側に 全面的に
花柱の数
種子のイボ 低平 低平 山型

スズメノカタビラには2種類ある

  スズメノカタビラ ツルスズメノカタビラ
根際の節からの発根 ほとんどない よくある
花序の分岐点の首輪 ない ある
生育場所 田舎のたんぼ 町のたんぼ、公園、道ばた

(太田)

レポート:1999年2月20日の観察会で見られた植物 

 場所:城南公園
 1.覚えたい用語:「葉柄内芽」葉柄の基部の内側に葉芽が育つもの。外からは葉芽が見えない。
 2.見た植物のリスト:樹木では、メタセコイア、マテバシイ、スダジイ、ニシキギ、ヒマラヤスギ(球果付)、シラカシ、モミジバフウ(葉柄内芽)。草本では、ハハコグサ、オランダミミナグサ(花付き)など。 

(太田)

No.2 エビフライ型マツボックリ!!

1998年12月

 場所:富山県氷見市大境 標高30m

アカマツ球果・食害 いったいだれが、こんな形にしたのか。
 左側のものは普通のまつぼっくり、右側のものは周辺のりんぺんがむしりとられ芯だけになり、まるでエビフライみたいな形になったまつぼっくりです。
 富山市ファミリーパークに尋ねると、「リスの仕業らしい」とのこと。そういえばどっか山奥のビジターセンターでも見た。こんな海の近くにもリスがいるとは、思いもしませんでした。

(太田)

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