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ばっさりスケスケ!CTで見てみた

身体の中の異常を見つけるために病院で使われることのあるX線CT装置は、医療の現場だけでなく、科学や産業の分野でも活躍しています。生物の体のつくりを調べたり、製品の出来栄えを調べたり、様々な用途で使われています。2023年に開催したロビー展「ばっさりスケスケ!CTで見てみた展」(11月11日(土)~12月10日(日))では、身近な素材や博物館にある標本をX線CTで撮影して紹介しました。ここでは、その一部を紹介します。

物質を通り抜けるX線

可視光とX線で見たHDMI端子
可視光とX線で見たHDMI端子 (クリックして拡大
X線CTはX線という可視光や電波の仲間(電磁波)を使っています。X線は可視光に比べ、物質を通り抜けやすいので、眼では中の様子が分からない不透明な素材も透かして見ることができます。同じX線を使うレントゲンは1方向から撮影するだけですが、X線CTでは複数の方向から撮影し、内部の様子をコンピュータで計算して立体的な内部構造を再現します。

断面画像の色の違いはX線の通りやすさの違い

コップに入った氷水
コップに入った氷水
よく見かける体の輪切りなどCTの断面画像はX線の通りやすさの程度を濃淡や色で表しています。軽くて空いている素材ほどX線を通しやすく、人体の画像であれば、空気、脂肪、水、骨の順にX線が通りやすくなります。同じ水でも、固体の氷は液体の水より膨らんでいるので、少しだけX線が通りやすくなります。CTで調べると内部の構造だけでなく、素材の違いやその量比を知ることができます。

切り放題!壊し放題!

オウムガイとムラサキウニ
オウムガイの断面(上)とムラサキウニの殻と口器(下)
博物館の大切な標本は、よほどのことが無ければ切ったり壊したりしませんが、CT像から作った3Dデータなら、いくらでも切り放題。好きな断面を作ることができるので、内部の様子も手に取るように分かります。実物と同じように、コンピュータの中で解剖することもできます。

いろいろ見てみた

おにぎり

ふんわり軟らかいおにぎりは隙間がいっぱい。拡大してみると、ご飯粒の中にも空洞があります。水に浸した時にできるひび割れが膨らんでできる隙間で、ご飯の食感に影響を与えます。

ハンバーガー

パティ(ハンバーグ)やチーズをパンにはさんだハンバーガーをまるごとX線CTで見てみると…。パンに比べ、パティやチーズはX線を通しにくい。パンはスポンジ状になって空気をいっぱい含んでいます。

乾電池

画像は左からマンガン電池、アルカリ電池、ニッケル電池の断面像。外見はよく似ていても、内部の構造はまるで違う。断面を切っていいのはCT像だから。危ないから電池は分解しないでね。
この記事を書いたひと
吉岡 翼
担当:地史・古生物
地球上にいた様々な時代の生き物や、その生き物が地層中に記録される過程に関心があります。LINK: 学芸員の部屋
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