富山市科学文化センター研究報告 第15号 1992年3月

indexと要約


目 次

原著

    生物系

 布村 昇: 富山県新湊市沿岸で発見されたウミナナフシの1新種(英文)

 布村 昇: 富山市沖のアゴゲンゲの胃中から発見されたミズムシ類(英文)

 布村 昇: トビウオ類に寄生するウオノエ科等脚類3種(英文)

 布村 昇: 琉球列島から発見されたウミナナフシ類(英文)

 布村 昇: 日本産陸棲等脚目甲殻類の研究 Vii.分類補遺−その3(英文)

 根来 尚: 富山県のツヤハナバチ類

 根来 尚: 富山県のニホンミツバチ

 南部久男・木戸 芳・矢部 衛・梨田一也: 日本海大和堆産魚類

 太田道人・谷田部悟: 富山県僧ヶ岳産ユキツバキの染色体数

    短報

 根来 尚: 黒部川および庄川河川敷にカワラバッタ、カワラスズおよび

      エゾエンマコオロギ

 二橋弘之・根来 尚: 氷見市宮田乱橋池とその周辺部のトンボ類

 二橋弘之・根来 尚: 富山県西部子撫川流域のトンボ類

 水野 透・根来 尚: 氷見市で採集されたウスイロコノマチョウ

 太田道人: 富山県新記録の植物 VI

 朴木英治: 富山市の酸性雨の経年変化と地域差

 石坂雅昭: 庄川流域の積雪調査報告

 石坂雅昭: 富山市の平地積雪断面測定資料報告


要約

日本産陸棲等脚目甲殻類の研究

Z .分類補遺−その3

布村 昇  富山市科学文化センター

日本産陸生等脚類の第7報は,補遺の第3回目として南日本各地、とりわけ、1991年度における琉球列島及び紀伊半島等における採集品を調査した成果から、ヒゲナガワラジムシ科、ミギワワラジムシ科、ヒメワラジムシ科、トウヨウワラジムシ科及びコシビロダンゴムシ科の以下の10種類について補遺として追加記載した。潮間帯や海岸林に生息する種類が多く含まれる。なお、第1報から第6報は1983年以来昨年にかけ、富山市科学文化センター研究報告に記した。

ヒゲナガワラジムシ科 Olibrinidae

クシモトヒゲナガワラジムシ Olibrinus kushimotoensis n.sp.

ミギワワラジムシ科 Marinoniscidae

コスゲヒゲナガワラジムシ Marinoniscus kosugei n.sp.

イリエナワミギワワラジムシ Marinoniscus aestuar n.sp.

ノムラミギワワラジムシ   Marinoniscus nomurai n.sp

ヒメワラジムシ科 Phillosciidae

ヤンバルミナミワラジムシ   Papauphiloscia terukubiensis n.sp.

トウヨウワラジムシ科 Trachelipidae

ヤンバルハヤシワラジムシ Nagurus kunigamiensis n.sp.

オキナワハヤシワラジムシ    Nagurus okinawaensis n.sp.

ワラジムシ科 Porcellionidae

ヤエヤマチョビヒゲワラジムシ  Leptotrichus chobihige n.sp.

コシビロダンゴムシ科  Armadillidae

ドナンコシビロダンゴムシ     Sphaerillo donanensis n.sp.

オオハラコシビロダンゴムシ    Sphaerillo oharaensis n.sp.

クシモトヒゲナガワラジムシ ヤエヤマチョビヒゲワラジムシ

 

富山県新湊市沿岸で発見されたウミナナフシの1新種

布村 昇  富山市科学文化センター

 富山県新湊市沿岸で採集されたAmakusanthura属ウミナナフシの1種を新種Amakusanthura toyamaensis(和名:アリソヒゲナガウミナナフシ:新称)として記載した。本種はAmakusanthura属としては本邦で2番目の種類である。なお、本種はAmakusanthura elongansと最も近縁と考えられるが、(1)第2触角が長く、各節に剛毛が少ないこと、(2)頭部中央の突起が顕著であること、(3)顎脚の形態の差異、及び(4)平衡胞が小さいこと等によって区別される。
なお、基準標本は富山市科学文化センターならびに大阪市立自然史博物館で保管される。

 

富山市沖のアゴゲンゲの胃中から発見されたウミミズムシ類(等脚目甲殻類)の一標本について

布村 昇  富山市科学文化センター

富山市科学文化センターの宮本望専門員が富山市岩瀬沖のアゴゲンゲの消化管から奇妙な等脚類を発見した。筆者の研究によるとこれは ウミミズムシJaniridae科に属するものとおもわれ、Janirella属に近いと思われるが、自由腹節が2個あるなど、特異な形態を持っている。
 しかし、本標本は魚の消化管中から発見されたものであり、胸部附属肢を全て欠いている不完全標本であるため、正確な種および属の決定は出来なかった。

 

  トビウオ類に寄生するウオノエ科等脚類3種

布村 昇  富山市科学文化センター

ウオノエ科はワラジムシ等と同じ等脚目甲殻類に属するが、魚類の血液を吸って生活している。最近はこのグループの寄生が魚類の商品価値を低下させるので水産業界では大きな問題になっている。

この度、小笠原諸島近辺の太平洋水域で東京都小笠原水産センターの加藤賢司氏によって捕獲されたトビウオ類の中の2種、ツマリトビウオとヒメアカトビウオに寄生する3種のウオノエ科について記載した。ツマリトビウオについては口腔に寄生する1種と鰓に寄生するMotothocya1種の計2種があり、また、ヒメアカトビウオ寄生の口腔にも1種Glossobius属の1種が寄生していた。こ れらのうち2種はそれぞれ、新種、Motocya katoi (和名:トビウオヤドリムシ:新称)及び、Glossobius cypseluri(和名:トビウオノエ:新称)として記載され 、いずれも模式標本は富山市科学文化センターで保管される。

 

琉球列島から採集されたウミナナフシ類

布村 昇  富山市科学文化センター

ウミナナフシは他の等脚目甲殻類類と異なり、縦に長い、特異な形態をもつ仲間である。

琉球列島に於けるウミナナフシ類は多くの種類の生息が予想されていながら、個体数がまとまって採集されることが少なく、従来、分類学的研究がほとんど無かった。この度、琉球列島のうち先島諸島における野村恵一氏や大森浩二氏の採集品に加え筆者自身の採集した標本を調査したので報告する。本報告で報告するのはスナウミナナフシ科に属する5種であり、うち、2種を新種として記載した。

ウミナナフシ亜目 Anthuridea

スナウミナナフシ科 Anthuridae

ハナレメウミナナフシ Pananthura ocellata n. sp.

オオモリスナウミナナフシ Cyathura omorii n. sp.

スナウミナナフシ属の1種 Cyathura sp.

モヨウウミナナフシ Mesanthura sp.(aff.miyakoensis Nunomura,1979)

アパンチュラ属の一種    Apanthura sp.

 

富山県のツヤハナバチ類

根来 尚  富山市科学文化センター

富山県からは、今日まで、ツヤハナバチ類(Ceratina属)は4種知られているに過ぎなかった。

 筆者は、筆者採集の富山県産のツヤハナバチ類および当館に寄贈されたツヤハナバチ類の標本を調査整理し、6種の存在を認めた。6種とは以下のリストのとおりであるが、これは本州内から知られているツヤハナバチ属の全てである。

 これらの種類について富山県内に分布図を作成するとともに、垂直分布をも明きらかにした。

1.エサキツヤハナバチ

  Ceratina esakii Yasumatsu et Hirashima

富山県初記録

2.イワタチビツヤハナバチ

  Ceratina iwatai Yasumatsu 

3.クロツヤハナバチ

Ceratina megastigmata Yasumatsu et Hirashima

4.サトウチビツヤハナバチ

Ceratina satoi Yasumatsu

富山県初記録

5.キオビツヤハナバチ

Ceratina flavipes Smith

6.ヤマトツヤハナバチ

Ceratina japonica Cockerell

 

富山県のニホンミツバチ

根来 尚  富山市科学文化センター

 現在平地で見られる蜜蜂のほとんどは、飼育されているセイヨウミツバチである。ニホンミツバチ(Apis cerana japonica Radoszkowski)は、飼育されているセイヨウミツバチ(Apis mellifera Linnaeus)とは異なり、青森県から鹿児島県まで広く分布している日本在来の蜜蜂である。

 本種の、富山県内での分布の調査は無かったので、県下の調査を行い分布の概略が分かった。

 ニホンミツバチは、富山県では海岸沿いから約1500m付近まで見られるが、時に 1900m付近でも見ることがある。丘陵地から山地の森林地に多く、平地で見かけることは少ない。本種の確認された地点の分布図を作成した。

 

日本海大和堆産魚類

南部久男:富山市科学文化センター, 木戸芳:石川県立水産高校(現青森県大間町役場水産課)
矢部衛:水産庁日本海区水産研究所, 梨田一也:北海道大学水産学部, 南卓志:水産庁北海道区水産研究所

日本海の大和堆は日本海の中央部に位置し、近年は、その資源面から注目されている海域であるが、本海域の魚類相は、ゲンゲ科、クサウオ科など分類上困難なグループが生息するため、正確な魚類相は報告されていなかった。

 本海域では、1987年より水産庁日本海区水産研究所(新潟市)によって水産資源に関する調査が行われている。今回、同研究所によって大和堆の水深290m−650mで調査採集された標本286点を精査した結果、日本海初記録のマツバラゲンゲをはじめ 20種類の魚類が確認され、本海域の魚類相が明かとなった。さらに、日本海の深海魚類相が北方海域由来の魚類から構成され、魚類相も貧弱であることを裏づける結果となった。

<確認された魚類リスト>

ガンギエイ科(1種):  ドブカスベ 
タラ科(1種):     スケトウダラ
ハタハタ科(1種):   ハタハタ
タウエガジ科(2種):  フサカケギンポ、ネズミギンポ
ゲンゲ科(5種):     アゴゲンゲ、アシナガゲンゲ、マツバラゲンゲ、クロゲンゲ、
             ノロゲンゲ
フサカサゴ科(1種):  ハツメ
カジカ科(1種):    ニラミカジカ
ウラナイカジカ科(1種):セッパリカジカ
ダンゴウオ科(2種):   コンペイトウ 、ホテイウオ
クサウオ科(2種):   ザラビクニン、イサゴビクニン
カレイ科(3種):    アカガレイ、ウロコメガレイ、ヒレグロ

 

僧ヶ岳産ユキツバキの染色体数

太田 道人:富山市科学文化センター , 谷田部 悟:日本放送協会富山支局

 ユキツバキは、北陸の山地帯に普通に生育する低木である。冬期、雪に押しつぶされてできる樹型は独特である。

 さて、ユキツバキの染色体数は、これまで、2n=30の2倍体の報告しかなかった(船引,1957,Kobayashi et Kirino,1963 など)。

 富山県宇奈月町僧ヶ岳(1855m)中腹には、大型の花をつけ、葉が肉厚のユキツバキが分布し、桐野(1975)は「越の光」として品種記載していた。今回、筆者らがこの型のユキツバキが含まれている個体群の染色体数を調査したところ、2n=45の3倍体が含まれていたので報告した。樹木の野生3倍体が発見された例は比較的珍しく、野生するツバキ属では初めてである。

 方法.大型の花葉をつけるユキツバキが含まれる群落をAとB、2ヶ所設定し、それぞれの群落から無作為に枝を採集し(A:18株、B:13株)挿し木した。発根した根を、押しつぶし法により処理し、染色体数を数えた。

結果.       調査した個体数と染色体数

3倍体(2n=45)個体数 2倍体(2n=30)個体数 合 計個体数
A. (550m)

11

7

18
B. (900m)

5

8

13

 1.僧ヶ岳には、2倍体と3倍体のユキツバキが混在して分布する。
 2.葉の観察から、3倍体は全体に葉が大きく、葉形が倒卵状被針形になる傾向にある。
 3.近隣のユキツバキ分布地においても3倍体が存在するものと推定される。
 4.今後、倍数性と花や葉の形態および生態との関係について、詳細な調査を進めていく必要がある。

  

短報

黒部川および庄川河川敷のカワラバッタ、カワラスズおよびエゾエンマコオロギ

根来 尚  富山市科学文化センター

カワラバッタ、カワラスズ、エゾエンマコオロギは、富山県では採集例の少ない直翅類で、各々2、3ヶ所から知られているにすぎなかった。これらの種類が黒部川および庄川の河川敷より採集できた。カワラバッタ、カワラスズは、石のごろごろした植生の貧弱なところに生息し、近年河川敷の環境変化にともなって影響をうけているものと思われる。
 エゾエンマコオロギは、砂浜海岸からのみ知られていたが、本県では、今回始めて河川敷からみつかった。
 富山県内の河川敷の昆虫類の調査はまだ不十分と思われ、その必要性をも指摘した。

                  採集地
カワラバッタ:宇奈月町宇奈月温泉
カワラスズ:宇奈月町宇奈月温泉、入善町墓ノ木、庄川町雄神橋
エゾエンマコオロギ:入善町墓ノ木、黒部市川端、庄川町雄神橋

 

氷見市宮田乱橋池とその周辺部のトンボ類

二橋弘之:大門町中町 , 根来 尚:富山市科学文化センター

氷見市南東部、高岡市西田に隣接する、氷見市宮田の乱橋池とその周辺部のトンボ相を調査し、51種ものトンボ類を確認した。

 51種というトンボの種類数は、富山県の天然記念物に指定されている小矢部市興法寺の池沼群から知られているのと同数であり、ごく狭い範囲から記録される種数としてはたいへん多いものである。また、それらの内には、ネアカヤシヤンマ、マダラヤンマ、マルタンヤンマ、チョウトンボ、オナガアカネ、タイリクアキアカネなど県内では希少の種が多く含まれる。

               乱橋池トンボ類リスト 

イトトンボ科:クロイトトンボ、セスジイトトンボ、オオイトトンボ、キイトトンボ、ア  ジアイトトンボ
モノサシトンボ科:モノサシトンボ
アオイトトンボ科:アオイトトンボ、オオアオイトトンボ
カワトンボ科:ハグロトンボ、ヒウラカワトンボ
ムカシヤンマ科:ムカシヤンマ
サナエトンボ科:ウチワヤンマ、コサナエ
オニヤンマ科:オニヤンマ
ヤンマ科:マダラヤンマ、オオルリボシヤンマ、ネアカヨシヤンマ、アオヤンマ、マルタ  ンヤンマ、クロスジギンヤンマ、ギンヤンマ、サラサヤンマ、ミルンヤンマ、ヤブヤンマ
エゾトンボ科:トラフトンボ、タカネトンボ、エゾトンボ
ヤマトンボ科:オオヤマトンボ、コヤマトンボ
トンボ科:ショウジョウトンボ、コフキトンボ、ヨツボシトンボ、ハッチョウトンボ、シ  オカラトンボ、シオヤトンボ、オオシオカラトンボ、ウスバキトンボ、コシアキトン  ボ、チョウトンボ、コノシメトンボ、オナガアカネ、キトンボ、ナツアカネ、タイリ  クアキアカネ、マユタテアカネ、アキアカネ、ノシメトンボ、マイコアカネ、ヒメア  カネ、リスアカネ、ネキトンボ

 

富山県西部子撫川流域のトンボ類

二橋弘之:大門町中町 , 根来 尚:富山市科学文化センター

福岡町沢川に発し、小矢部市宮島峡を流れる子撫川流域からは、ハグロトンボ、アオサナエ、コオニヤンマ、コシボソヤンマなどの県内では希少の種をはじめ24種のトンボ類が記録されていた。

 子撫川流域を再調査したところ、49種のトンボ類が確認され、そのなかには県内ではまれな種であるヒラサナエも確認されている。

以前記録があり、今回確認できなかったのはカトリヤンマ1種である。

              子撫川流域トンボ類リスト 

イトトンボ科:エゾイトトンボ、クロイトトンボ、オオイトトンボ、キイトトンボ
モノサシトンボ科:モノサシトンボ
アオイトトンボ科:アオイトトンボ、オオアオイトトンボ
カワトンボ科:ハグロトンボ、ミヤマカワトンボ、オオカワトンボ、ヒウラカワトンボ
ムカシヤンマ科:ムカシヤンマ
サナエトンボ科:ヤマサナエ、ヒラサナエ、ダビドサナエ、ウチワヤンマ、アオサナエ、  コオニヤンマ、コサナエ
オニヤンマ科:オニヤンマ
ヤンマ科:ルリボシヤンマ、オオルリボシヤンマ、クロスジギンヤンマ、ギンヤンマ、コ  シボソヤンマ、サラサヤンマ、ミルンヤンマ、ヤブヤンマ、(カトリヤンマ)
エゾトンボ科:タカネトンボ、エゾトンボ
ヤマトンボ科:オオヤマトンボ、コヤマトンボ
トンボ科:ショウジョウトンボ、コフキトンボ、ヨツボシトンボ、シオカラトンボ、シオ  ヤトンボ、オオシオカラトンボ、ウスバキトンボ、コシアキトンボ、コノシメトンボ、  キトンボ、ナツアカネ、マユタテアカネ、アキアカネ、ノシメトンボ、ヒメアカネ、  リスアカネ、ネキトンボ

 

氷見市で採集されたウスイロコノマチョウ

水野 透:富山県昆虫同好会 , 根来 尚:富山市科学文化センター

ウスイロコノマチョウは、南西諸島に生息する大型のチョウで、季節風や台風などの気流に乗って日本本土に飛来する、いわゆる迷チョウである。富山県の記録は今まで二度あるのみで、数少ないものである。

 氷見市宮田の乱橋池で採集され、科学文化センターに寄贈された2頭のチョウ標本を筆者等が同定したところ、本種ウスイロコノマチョウであった。これらは、富山県内で3および4頭目のウスイロコノマチョウである。

  採集記録
      ウスイロコノマチョウ
氷見市宮田乱橋池 1♂ 1991-VIII-16 (二橋弘之)
氷見市宮田乱橋池 1♂ 1991-VIII-25 (二橋 亮)

 

 

富山県新記録の植物 VI

太田道人 富山市科学文化センター

富山市科学文化センターでは、富山県に分布する全ての種類の維管束植物を収集し、そのリストを作成する作業(富山県のフロラ調査という)を行っている。その過程で、新たに見つかってくる植物について、本誌に継続的に報告している。

今回は、以下の6種の植物を記録した。これらは、太田の採集品の他、富山大学長井真隆教授、富山高校大島哲夫校長、福岡町の堀 与治氏からの寄贈標本中に含まれていたもので、全て富山市科学文化センターに収蔵される。

         富山県新記録植物リスト

1.コバノヒノキシダ
  富山県八尾町庵谷  (大島哲夫) 北陸地方での初記録、日本海側の分布北限

2.エゾメシダ
富山県上市町折戸 (大島哲夫)

3.ツルガシワ
富山県井の口村赤祖父谷(堀 与治・太田道人)
富山県福光町糸谷 (堀 与治)

4.メリケンカルガヤ
帰化植物 富山県大山町上滝 (太田道人)
富山県富山市五福 (長井真隆)

5.ミゾハコベ
 富山県小杉町上野  (太田道人)

6.ホソバヒメミソハギ
帰化植物 富山県福岡町土屋 (太田道人)

  

富山市の酸性雨の経年変化と地域差

朴木英治 富山市科学文化センター

 1988年6月から1991年3月まで科学文化センター屋上で観測した降水の酸性度について、季節変化、年度毎の変化をまとめた。
 また比較のため月岡地区センター、萩浦地区センター、浜黒崎地区センターでの観測結果もまとめた。
 科学文化センターの年度毎の比較では、1991年度は1988年度に比べて平均pHが0.35低下し、これに対応して水素イオンの降下負荷量も2倍となった。

また、場所による違いでは、浜黒崎地区センターでの平均の酸性度が最も低く、他の場所よりも酸性雨が強かった。一方、萩浦地区センターでは平均の酸性度が最も高く、酸性雨でない雨の比率も、他の場所に比べて多かった。
 これは、大気の比較的きれいな浜黒崎では、大気中に存在する酸性雨の中和物質が少なく、逆に萩浦では、中和物質が多いということで説明が可能である。
また、日本海側の各地では冬期の降水が夏に比べて酸性が強くなると言われているが、科学文化センターでは1989年の冬期でこの現象が見られたのみである。

庄川流域の積雪調査報告

石坂雅昭 富山市科学文化センター

 1982年から1987年にかけての積雪調査では、神通川流域の調査を行い、富山平野の海岸部から岐阜県高山市にかけての積雪の特性を明らかにした。
 今回は、その神通川の西側をほぼ平行に流れる庄川流域の五カ所を選んで積雪調査を行った。先の神通川流域調査の結果と比較対照して、北陸の海岸部から中部地方の内陸にかけての広域な積雪の特性を面的に明らかにすることを目的としている。
 測定点は五カ所、断面の雪質観測から、湿雪地域から乾雪地域の区分を明らかにすることを主眼に行った。また、下層の雪の密度に注目した観測を行った。
 観測の地点は図の5地点である。地点の地名は、表に掲げたとおりである。
 雪温の観測から、積雪内にマイナス温度を観測したのは、地点1の岐阜県蛭ヶ野高原のみであった。その他の地域は、全て雪温が全層にわたり0℃を示した。その中で、地点2、3は、含水の少ない雪がかなり多く保存されていて、水を大量におびることがなかったことを示していた。しかし、地点4になると、下層にもかなりの含水が認められ、完全な湿雪の状態であった。したがって、この地点以北の海岸部までの地域は、標高の高い地域を除いて、湿雪地帯と考えられる。すなわち、地点1は明瞭な乾雪地域、地点4、5は明瞭な湿雪地域、地点2、3は、その中間的な状態をあらわしている。

 

富山市の平地積雪断面測定資料報告 1990ー1991年冬

石坂雅昭 富山市科学文化センター

 1990年の12月から1991年の3月かけ、富山市西中野町城南公園にて、冬期間に行った積雪の断面観測の結果を報告した。測定は、毎月5のつく日、あるいはそれができない場合は、その近日を観測の日としている。昨年と同様、今年も雪が少なく、観測日に雪があることが少なかった。


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