強い風でのり巻き状に
雪まくり (第8回)



  
   
   粘着性のある雪と風がつくった「雪まくり」
   
 1980年1月、風の強い冬の朝だった。まだ公園として整備されていない当館横の空き地に枕のような大きさと形の雪の塊がごろごろしていた。当時の当館の館長であった長井真隆氏からすぐ写真に撮っておくように指示をされ、写真とともに16ミリフィルムに収めた。

この現象は、富山市周辺の他の地域でも見られ新聞紙上にも写真入りで取り上げられた。当時、既に雪の研究を始めていたが、私には初めての現象だった。

 その後、文献などで調べ、「雪まくり」と呼ばれる現象で、硬い雪の上にうっすらと積もった新雪が、強い風にまくり上げられて、転がりながら海苔巻きのように新雪を巻いてできる現象であることを知った。山形県の庄内地方では、これを「俵雪」と呼び豊作の印としていること、成因について考える俵雪研究会というものまであることが分かり、早速そこから資料を取り寄せた。

 当時始めていた積雪の断面観測の結果と合わせ、この現象の成因について雪の学会に発表した。最近ではあまり見られないが、この現象の面白いところは海苔巻きのように雪を巻きつけるには、ある程度雪に粘着性がないとだめな点である。したがって、さらさらの雪の多い北海道ではまれで、やはり本州の日本側の粘りのある雪が降る所に多い。

ところで雪の粘りって何だろう。どのように定義して、どう測定したらよいのだろう。雪は確かに一つの物質ではあるが、含まれる水分の量など刻々とその性質を変える。特に、富山のような雪国にしては暖かい地域の雪は変化が激しい。「そうだこの変化の激しい雪を研究しよう」。定義からして考えなければならないのだから、誰も手をつけずにいるところがたくさんあるだろう。こうして、次第に雪の研究に没頭するようになったのである。 (元学芸員 石坂雅昭,2000.4.13掲載)




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