市民と楽しさ分かち合う
みんなの科学 (第100回)



  
   
   特別展「宇宙展−星空を見る−」に訪れた子供たち
   
 博物館で働く者はお客さんに喜んでもらえる展示会を企画し実行する。このことに最大限努力している。

 今回の特別展「宇宙展−星空を見る−」は、館蔵品もほとんどなく、面白い展示をそろえるのが大変ではないかと心配した。しかし、担当者たちはすごい努力と創意工夫を見せてくれた。

 中心になった天文担当の布村克志学芸員は企画を進めるとともに、多くの模型などを自作した。渡辺誠学芸員は迫力ある資料を借り、実験装置を組み立てた。最新かつ第一線の天文学を研究した林忠史主事はオリジナリティーあふれる装置を考え出した。展示品は天文担当のほか、吉岡寛英、高橋政則、中村哲也、田島昭子ら富山市天文台の嘱託、臨時職員が手作りで分担し、科学文化センターの全職員が一丸となって協力した。多くのボランティアも貴重な時間を提供してくれた。そして「十四歳の挑戦」でセンターで職場体験していた中学生もその一端を担った。少ない資料と限られた予算と時間だったが、協力と創意工夫で完成させ、難しいテーマを大変面白いものにした。

 オープンした日、展示を見た小学生から「地球ってこんなに小さいんだね」「実際に宇宙を飛んだ人工衛星ってすごいね」などと歓声が上がった。そして次回の展示はどんな風にしようかと思いを巡らせたのである。

 富山市科学文化センターは自然科学の博物館として、自然や科学について啓もうするだけでなく、文化を作り出すことが重要であると考えてきた。将来にわたり市民のニーズにこたえることができないと、本当の意味で市民の信頼は得られない。遠くを見据えた活動が必要である。それには足腰をしっかり据え、遠くを見て進んでいかなくてはならない。科学は一部の人のものではなく皆のものである。今後も科学や自然に接することの楽しさを分かち合いたい。(布村昇 2000年9月5日掲載)




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