絶滅のドラマ光で演出
恐竜の展示 (第30回)



  
   
   巨大いん石の落下を表現した演出の一こま
   
 写真は、科学文化センター自然史展示室、動く恐竜「富山のアロ君」の向かい側の壁で演出されているドラマの一こまである。

 自然史展示室のテーマは、「富山の自然とそこに生きる人々」。しかし、人類誕生以前を扱う地学の展示では、直接人類を扱うことはできない。そこで、地学系の展示では環境と生物との関係にスポットをあてることになる。その最大の山場はやはり中生代末、約六千五百万年前の「恐竜絶滅」のドラマであろう。

 大量絶滅の原因に、有力な説としていん石の衝突が挙げられている。これに関し、壁を使って映写機と鏡で光と影の演出による無声のドラマが展開されている。

 このコーナーには富山県で初めて発見された肉食恐竜の足跡化石や、北海道で採集された直径一bにも及ぶ巨大なアンモナイトの展示がある。

 これらを見ていると、照明が消され、あたりは暗くなる。すると、壁の部分に照明が当たる。見渡す限り雲ひとつない青空と地平線の映像。そこへ右上の天空から光り輝く火球が斜めにゆっくりと落下してくる。火球が地平線の奥に消えて一呼吸後、一瞬のうちに空全体が真っ赤に染まって消える。やがて照明がついて、展示してあるアロサウルスの骨格標本が見えてくる。県内で化石が発見された恐竜と同類の恐竜である。

 これは巨大いん石が落下し、恐竜をはじめ多くの生物が絶滅した、いわゆる「大量絶滅」を思わせる演出なのである。入館者の中で、この演出に気がつき、われわれの意図を理解してくれた人はどの程度おられるだろうか。科学文化センターの展示には、このほかにもさまざまな工夫が凝らされている。科学文化センターの楽しみ方として、こんな展示室における「隠し味」を探すのも楽しいのではないだろうか。(赤羽久忠 2000年5月20日掲載)




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