32万件余の情報を公開
データベース公開 (第92回)



  
   
   12000枚の写真を提供する画像データベース
   
 標本データベースは、博物館で最も重要な財産の一つである。科学文化センターでも、県内の植物や動物、化石などの分布状況がどのコンピュータからも瞬時に検索でき、質問への回答に大活躍している。全国、世界からの問い合わせがある。もちろん展示の準備、研究にも利用されている。入力されているデータは、三十二万件を越した。

 一九八三年、就職したばかりの私は、寄贈された進野久五郎氏の植物コレクションの整理を命ぜられ、目録作成の必要に迫られた。標本整理に二年を費やした後、急ぎデータ入力にとりかかったが、一行一行入力していたためペースは上がらなかった。さらに当時の科学文化センターのパソコンには、高価なハードディスクは付いておらず、漢字を入力することにさえ苦労しながら、何枚ものフロッピーディスクにデータを記録していった。この時、目録作成の自動処理ももくろみ、学名辞書も同時に作った。数千件のデータを入力したころ、市電子計算課の助けを借り、残りのデータ入力と目録形式の自動出力を短期間に行えるようになり、収蔵資料目録第一号「進野久五郎植物コレクション」(一九八七年)を出版できた。この目録が国内の博物館でデータベースを使って作成した初めての例となった。

 その後、各分野で毎年資料を登録しデータベース化してきた。現在、写真データベースも加わり、出版物の編集作業などに活用されている。

 博物館が持つデータはできる限り公開しなければならない。科学文化センターでは、展示室端末での公開は随時行ってきたが、一九九七年にはインターネットで公開できるようになった。さまざまなデータが利用しやすくなると、だれでもそれらを組み合わせて分かりやすい資料をつくることが可能になるし、新たな発見に結びつくこともある。データベース量の拡大ばかりでなく質的な信頼性をさらに高めていきたい。(太田道人 2000年8月24日掲載)




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