富山平野の淡水魚

 富山県は急流河川が多く、特に黒部川や常願寺川など県東部の河川は一気に富山湾に注ぎます。県中央部には、神通川や庄川など平野部を比較的ゆったりと流れる川が見られます。神通川は岐阜県飛騨地方を源に持ち富山県を流れる川では流域面積が最も大きい河川です。また、黒部川や庄川の流れる平野部には、湧水の出る小川が多くあります。能登半島の付け根にあたる氷見地方には小さな川が見られ、昔ながらの農業用水も多くあります。

湧水の小川にすむトミヨ

 富山平野は、黒部川や庄川、小矢部川などの平野部に湧水がわきでるところが多く、そこにはトゲウオの仲間のトミヨがすんでいます。春にはオスが縄張りをつくり、水草を集めて巣をつくります。

希少な淡水魚、イタセンパラ

 イタセンパラは、富山県氷見市と濃尾平野、淀川水系の限られた水系にしかいないコイ科の淡水魚です。富山県では1991年に氷見市で30年ぶりに再発見され、限られた水域に生息していることがわかりました。1950年代には放生津潟(現在の富山新港)周辺の農業用水をはじめ氷見市、高岡市、新湊市、富山市など富山平野で記録されています。 イタセンパラは秋にイシガイなどの二枚貝に産卵します。卵は二枚貝の中で成長し、翌年の春には稚魚となって出てきます。


イタセンパラ
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神通川のサクラマス

 神通川は岐阜県の飛騨地方が源で、富山平野の中央部を流れます。魚類の種類も多く、江戸時代からサクラマスが獲れる川として知られています。サクラマスは「鱒のすし」で有名で、富山県は全国的にサクラマスの漁獲量が多い県です。 江戸時代に書かれた日本各地の産物を紹介した「日本山海図会」には、神通川のサクラマスがでており、越中神通川産のものが名品と紹介されています。また、漁の絵もでており、現在でも似たような漁でとられています。

サクラマスとヤマメ
 大きさや模様は違いますが、どちらも同じ種類の魚です。海に下り、成長して川にもどってくる大型のものをサクラマス、川に居残っている小型のままのものとサクラマスの幼魚をいっしょにヤマメと言って区別しています。  ヤマメは日本では北海道から神奈川県までと日本海側全域、九州中北部に分布します。海へ下るのは、山口県より北の日本海側、太平洋側では千葉県より北です。 国外では、オホーツク海沿岸、朝鮮半島、台湾に分布します。

神通川での生活史
 秋(10〜11月)に神通川本流や支流の熊野川で産卵します。水温8℃で55日ほどで孵化し、稚魚は冬の間石の下で過ごします。春には、雪解けの増水で下流に広がります。アユの解禁の6月下旬頃には中流で10cmほどのものがよく見られます。川で成長しますが、翌年の2月頃には海へ下るものと川に居残るものがわかれてきます。海へ下る時期は3〜4月で、体長は13〜15cm、体重25〜35g、8割がメスです。海に下ったものは、日本海北部まで回遊します。翌年の春には体長40〜70cm、体重2.5〜2.9kgほどに成長し、生まれた川に帰ってきます。戻ってくるのは1000匹に2〜3匹ほどです。川へ入るとエサはほとんど食べず、深い淵などですごします。その後上流へのぼり秋には産卵し、3年の寿命を終えます。繁殖するペアーは大部分がサクラマスのメスとヤマメのオスです。

サクラマスの漁獲量の変化
 サクラマスは北海道と本州の山形県、新潟県、富山県等で漁獲されています。最近では全国で40〜90トンですが、昭和30年代には150トン前後漁獲され、富山県が全国一になった年もあります。  富山県の漁獲量は神通川が大部分を占めます。神通川では明治40年代には多い年で160トンもとれていましたが、最近では2〜9トンほどです。これは、ダムの建設や河川工事のために川の形が変化し、産卵場所や稚魚のすむ場所が少なくなったためだと考えられています。

 

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