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特別展「ともに生きよう!地球の仲間たち−絶滅と共生−」


平成11年7月16日(金)〜9月15日(水)




「復活の努力」 のコーナー紹介

 多くの生き物が絶滅に近づき、また減少するなかで、さまざまな人々の努力で絶滅の危機から救われつつある生き物がいます。このような活動をより多くの生き物にひろげ、生き物の絶滅をふせぎたいものです。






◆絶滅のふちからの回復、アホウドリ

アホウドリの羽毛布団

 アホウドリの歴史、生態、長谷川博氏の鳥島での調査の様子、保護活動、まだ残る問題を紹介しています。

(主な展示物)
 アホウドリの羽毛でつくられた布団
 アホウドリのデコイ(模型)2体
 調査道具一式
 今年の鳥島の映像
 流れ着いたゴミ、アホウドリの吐き出した異物
 (上記すべて所蔵または提供 長谷川博氏)
 アホウドリの鳥凧(提供 林兼二氏) 


アホウドリの悲劇
 アホウドリは北太平洋全域に分布し、繁殖期には伊豆諸島や小笠原諸島などで、大きなコロニー(集団繁殖地)をつくって繁殖していました。明治から大正にかけ羽毛をとるため1,000万羽もがとられ激減し、1949年には絶滅宣言が出されるほどでした。大きな海鳥のため、陸上では動きが鈍く、こん棒で簡単に殺されました。

1000羽突破と、まだ残る問題

アホウドリのデコイ(模型)と子育ての様子 

アホウドリ、1,000羽突破
 1980年代には繁殖地の崖にハチジョウススキが移植され繁殖成功率が増しました。1980年代末には地滑りのためコロニーに土砂が流入したため、大規模な砂防工事とシバの植栽が行なわれました。1992年からは安全な場所に新しいコロニーをつくるため、実物そっくりの模型(デコイ)と鳴き声で若い個体をさそい、1995年には1つがいが産卵しました。
 現在、鳥島のアホウドリは繁殖のつがい数が200組を超え、毎年100羽以上のひなが巣立ち、総個体数が1,000羽を越えるまで回復してきました。

 しかし、問題はまだあります。アホウドリが釣り針を飲み込んだり、ひなの吐き出した胃の内容物からプラスチックのスプーンの一部やカップ麺のカケラ、風船などが見つかっています。水銀などの重金属やPCBなどの化学物質による海洋汚染や重油流失事故も心配されています。


無人島、鳥島での生活

保護と調査のための鳥島での生活
 鳥島は1965年の群発地震以来無人島で、1976年から長谷川博氏によって調査がはじまりました。島へは漁船をチャータし、生活用品や調査道具が運ばれます。鳥島は崖が多く荷物の運搬も一苦労です。調査基地は測候所跡の廃屋で電気がなく自家発電です。コロニーは崖にあり調査にはヘルメットやロープは必需品です。




◆希少な小笠原の植物を救う、植物園の活躍


植物園の活躍 種子から増殖して植え戻しをしている小笠原のムニンノボタンなどでの植物の保護活動を紹介しています。

(主な展示物)
 ムニンノボタン、コバノトベラ、ムニンツツジの押し葉標本(所蔵 東京大学総合研究博物館)
 ムニンノボタン、コバノトベラ、ムニンツツジ、ホシツルランの保護活動の写真(提供 小石川植物園)

 明治以降、本格的に人々が移住した小笠原諸島の父島、母島、弟島などでは、開墾、木材の切り出しがされ、人と一緒に持ちこまれたヤギや牛などの家畜による食害、島外の植物の侵入のために、原生木でおおわれた自然は貧弱になり一変しました。
 小笠原だけにいる(固有)植物の多くに絶滅の恐れがあることをみた小石川植物園は、1984年からムニンノボタンをはじめとした危機的な状況の植物の保護に乗りだしました。絶滅に瀕する植物を救うためにも植物園の役割は、今後ますます大きくなるでしょう。




◆野生への復活、コウノトリ
 

コウノトリ

 人里で生活するコウノトリの歴史、生態、保護、野生復活の試みを紹介しています。

(主な展示物)
 コウノトリのはく製
 コウノトリの偽卵(所蔵 豊岡市教育委員会)
 コウノトリの鳥凧(提供 林兼二氏)
 昔のコウノトリの生態写真(提供 豊岡市教育委員会など)
 コウノトリの子育ての写真など(提供 豊岡市教育委員会)
 コウノトリ保護増殖センター、コウノトリ郷公園の写真
 野生に戻るまでの問題のイラスト(提供 加藤明子氏)

 コウノトリは江戸時代には日本各地に生息していましたが、明治時代に乱獲され激減しました。兵庫県豊岡盆地に昭和初期に40-50羽生息していたコウノトリも、1950年代からの農薬の使用などによるエサ不足や農薬が体をむしばんだため減少しました。人工増殖もなかなか成功しませんでしたが、ロシア(当時はソ連)産のカップルからヒナが誕生し、その後しだいに増え、今度は増えたコウノトリを野生に戻す試みがはじまろうとしています。







「生き物いっぱいの未来を」 のコーナー紹介


生き物いっぱいの未来を


 地球上には、現在報告されているだけで150万種、未知のものをいれると3000万とも5000万ともいわれる種類の生き物が生きていると言われています。地球上の生態系のバランスは、人間も含め、生き物が相互に関係することで保たれています。しかし、今、実に多くの生き物が人間の営みのために絶滅に瀕し、このバランスが崩れかけています。
 人間も地球上の自然の一員です。私たちは、『多くの生き物と"ともに生きていく"』ために、生き物や自然とのつながりに関心を持ち、身近なところで世界で何が起きているのかを見つめることが大切ではないでしょうか。





★「絶滅した生き物たち」 のコーナーへ

★「消えゆく生き物たち」 のコーナーへ


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最終更新 市川 2001.12.17.
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