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普及雑誌「とやまと自然」2002年度 夏の号 特別展「はかる」特集(ウェブ版)

■はかるための基準 −単位−

測定の成果を役に立てるには、結果を記録したり、人に伝えたりすることが重要です。測定した結果はふつう、「2mの長さ」や「5kgの重さ」のように、数字に単位を添えて記録します。「2mの長さ」とは、1mの長さの2倍ですし、「5kgの重さ」とは、1kgの重さの5倍です。単位とは、それぞれの量の基準となる大きさのことです。基準となる単位がきちんと決まっていないと、他の人にきちんと伝えることができず、測定したことを役立てることができません。きちんとした単位には、次の二つの面が求められます。

体を基にした昔の長さの単位
(寸:すん、束:つか、尺:しゃく、咫:し、尋:ひろ)
図1:体を基にした昔の長さの単位

◇多くの人に使えるように(社会の面から)

昔は、それぞれの地方でのみ通用する単位がたくさんありました。それらの多くは、体を基準にした単位でした。

交易の範囲が広がるにつれて、地方を移動すると変わる単位をいちいち換算する複雑さや面倒さがふえたため、より広い範囲で通用する単位が求められるようになりました。その単位の基準としては、すべての人が納得できるものであることが必要です。そこで、「地球」や「水」を基準にした、メートル法の単位が定められました。

メートル法の長さの基準「メートル」は「地球一周の4千万分の1の長さ」、質量の基準「キログラム」は「一辺10cmの立方体の容器に入る水の質量」、時間の基準「秒」は「一日を24時間、1時間を60分としたとき、1分の1/60の時間」でした。実用の面から、長さと質量については基準器が作られ、「メートル原器」という基準尺と「キログラム原器」という基準分銅が作られました。

◇精度の高い測定へ(科学の面から)

長さの基準器のメートル原器は2本の線の間隔で1mを定めていましたが、その引いた線の幅の分だけ誤差が出ていました。また、秒の基準であった地球の自転は厳密には一定でないことが分かりました。科学の進歩に伴い、単位の基準はさらに厳密さが必要となり、宇宙のどこでも、いつでも一定で変わらない基準が求められるようになりました。

そこで、単位の基準として、特定の「物」を使うのをやめ、どこででも厳密に同じことが再現できる「光や原子などの物理現象」を使うようになりました。長さの単位は、宇宙のどこででも速さが変わらない「光」が一定時間に進む距離を基準とすることになりました。時間の単位は原子レベルの現象を利用した「原子時計」(「時間をはかる」参照)を基準とすることになりました。一方で、質量の基準だけは変わりません。キログラム原器の示す質量が十分に安定しているからです。

これらの改良がメートル法に加えられ、さらに合理的で信頼性が高くなった国際単位系(SI)が制定されました。

◇現在の単位 −国際単位系(SI)−

現在、世界で広く使われている国際単位系(SI)は、1960年の第11回国際度量衡総会で制定されました。この単位系は、七つの基本単位と、基本単位を組み合わせて作る組立単位、10のべき乗倍を表すSI接頭語(kキロ・Mメガやmミリ・μマイクロなど)からできています。k:千倍、M:百万倍、m:千分の1、μ:百万分の1です。

国際単位系(SI)で定められている7つの基本単位のなりたち
図2:国際単位系(SI)で定められている7つの基本単位のなりたち

普段なにげなく使っている「メートル」や「キログラム」などの単位には、このような歴史と知恵が隠されているのです。

表1:国際単位系(SI)で定められている7つの基本単位の定義
名称記号「1の量」の定義
長さメートルm1/299 792 458秒の時間に、光が真空中を伝わる行程の長さを 1 m とする。
質量キログラムkg国際キログラム原器の質量を 1 kg とする。
時間s質量数133のセシウム原子の基底状態における、二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の、9 192 631 770周期分の継続時間を 1 秒 とする。
電流アンペアA無限に長い二本の直線の導線を1mの間隔で平行に置き、それらの導線に同じ強さの電流を流したとき、真空中で導線1mごとに2×10-7ニュートンの力を及ぼし合う強さの電流を 1 A とする。
熱力学温度ケルビンK水の三重点(水と氷と水蒸気が同時に存在する唯一の温度)での熱力学温度の1/273.16の温度を 1 K とする。
物質量モルmol「質量数12の炭素0.012kg分の中に存在する原子の個数」と等しい数の粒子が集まった量を 1 mol とする。
光度カンデラcd周波数540×1012ヘルツの単色光を放射する光源が、立体角1ステラジアンあたり1/683ワットの強さで放射しているときの、光源のその方向における光度を 1 cd とする。
はじめに 重さ 長さ 時間 温度 単位

富山市科学文化センター
公開 市川 2002-08-18
最終更新 市川 2008-11-13
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