今月の話題(気象)
光 柱

No.239
 
冬の晴れた夜
冬の晴れた、そして海のおだやかな夜、富山湾には漁船の漁り火がともります。 漁り火はとても明るく、人工衛星から夜の地球を観測すると、よい漁場がある日本海中部は、たくさんの人々が生活する都市の明かりなみに輝いています。  こんな夜、海の方向に体を向け視線を少し上の方に向けてみて下さい。
明るくかがやく光の柱が何本も見えたら、それは光柱とよばれている現象です。  光柱が日本でも知られるようになったのは1983年長崎県の対馬が最初です。たくさんの漁船が作る何百本もの光柱が夜空に現れ、それを見た人々から報道機関などに問い合わせがさっとうしたそうです。中には「UFO」の襲来だと思った人もいたそうです。  その後、函館、札幌、福井など、おもに日本海沿岸の各地で見たという報告がありました。


光柱の正体
雲はその形や現れる高さなどから10種類に分けられています。そのなかで空の高いところに現れる層状の雲、うす雲(巻層雲)は氷晶とよばれる小さい氷の結晶からできています。  氷晶はまた鉛筆のような形をしたもの(六角柱)と鉛筆をうすく輪切りにした形のもの(六角板)の二つに大きく分けられます。この内、六角板の氷晶からできているうす雲が空にあるとき、漁り火の強い光は氷晶によって反射され陸地にいる人の目に入ります。  ところが人の目には、この光が、まるで空にあるかのように真っすぐやってくるように見えます。  これが光柱の正体です。  誰にでもそれとわかる光柱は、そんなにひんぱんには現れません。でも注意して空を見ていると、かすかな光柱はわりとよく現れています。


光柱のでき方
ニューフェース
光柱は太陽や月の周りにできるカサの仲間です。「カサがかかると雨」ということわざからもわかるように、カサは昔から知られた気象現象でした。  光柱を作る雲はほかのカサを作る雲と違う特別のものではありません。  漁り火の明るさが昔にくらべてかなり明るくなったこと,つまり人間の営みが自然の中に、このニューフェースを登場させたといえるでしょう。

(吉村 博儀)
1998.01.01

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