今月の話題(昆虫)
テントウムシ

No.229
早春からみられるテントウムシ
 3月に入るとすぐに、「啓蟄(けいちつ)」という言葉を聞かれたことと思います。啓蟄とは、季節の移り変わりを表す春分、夏至、秋分、冬至などを含む二十四節気の一つで、3月5日の頃です。地中で冬ごもりしていた虫が地上に姿を現す日とされています。しかし、もともとは中国で作られた季節の名付け方で日本に合わないところもあり、また、日本でも南北で季節の移り変わりが違います。富山県で3月5日では虫のはい出るにはまだ早すぎるようで、年によって違いますが、虫の出現は早くても3月の中旬、通常は3月下旬からでしょう。
 おなじみのテントウムシも、春早くから活動を開始する昆虫です。
 私が昨年最も早くテントウムシを見たのは、3月20日市内の公園に咲くオオイヌノフグリの花上で見たナナホシテントウでした。またヒメアカボシテントウが3月25日、日の当たる桜の木の幹上をチョロチョロと歩いているのを見ました。しかし、ちょっと日が陰るとやはり寒いのか、木の肌のちいさな窪みでじっとしていました。
 4月にはいると、ようやく暖かい日が続くようになります。春の光に誘われるように、成虫で冬越しをしていた虫たちの活発な活動が見られるようになります。


いろいろいるテントウムシ
 テントウムシというと、体長7mmほどで赤地に7つの黒い紋があるナナホシテントウを思い浮かべる人が多いかもしれませんね。それ以外にもテントウムシには多くの種類があります。ヒメアカボシテントウは、4mmほどの小さなテントウムシで、黒地に赤い小さな紋を2つ付けています。体長10mmを越え、赤と黒の亀の甲のような紋があるたいへん大きなカメノコテントウ。カメノコテントウを小さくしたような、4mmほどのヒメカメノコテントウ。そして、最も普通に見られるのがナミテントウです。ナミテントウは体長7mmほど、黒地に赤い2つの紋や4つの紋、赤地に黒の19紋、黒紋の全く無いものなど、これが同じ種なのかと驚くほど斑紋の変異があります。その他にも、テントウムシの仲間の種類は多く、富山県からは29種も知られています。

目立つ模様のテントウムシ
 いろいろいるテントウムシですが、どれを見ても赤と黒の模様で、木の枝や葉の上でいるとたいへんよく目立ちます。しかも、天道虫(てんとうむし)の名に違わず、お天道様(太陽)のもと、堂々と枝や葉の上で歩き回っています。この天道虫の名は、植物のてっぺんまで登って太陽に向かって飛ぶところから付けられたそうです。こんな目立つ姿で、小鳥などに捕まって餌にされてしまわないのでしょうか。
 テントウムシを捕まえると、足の関節、人の足に例えるとひざにあたる関節から黄色い体液が出てきます。テントウムシはかわいいけれど、あの液がいやだという人もいるでしょう。体液には、アルカロイドと呼ばれる物質が含めれ、特有の臭いと苦みがあります。小鳥やアリなどはこの液を嫌います。それで、テントウムシは餌にされないのです。
 テントウムシは、その目立つ色と模様で「私は食べられない虫ですよ」と宣伝しているのです。

(根来 尚)
1997.04.01

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