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今月の話題:No.53

ウニ

 夏になると海に行く機会が多くなります。海ではふだん見ることのできない動物たちを観察することができます。ウニの仲間もそのひとつです。富山湾の海岸にはどのようなウニがいるのでしょうか。

 岩やごろごろした海岸、つまり磯では、形がクリのいがそっくりのウニの仲間が見られます。富山湾の磯に普通に見られる種類は、紫色でトゲの長いムラサキウニ、赤色で平たいアカウニ、緑っぽくトゲが短いバフンウニなどです。バフンウニは名前こそきたない感じですが味がもっとも良いウニです。

 砂浜には、トゲがとても短いカシパンウニの仲間がたくさんすんでいて、島尾から雨晴にかけての海水浴場でも、海底にびっしり出現することもあります。カシパンに近いウニにはタコノマクラやブンブクチャガマなどがありますが、いずれも面白い名前ですね。これらの名前は明治の初め東京大学の三崎臨海実験所の採集人だった青木熊吉さん(通称熊さん)がつけたものです。

 さて、ウニの口は下面中央にあり、「アリストートルのちょうちん」とよばれる強いあごがあります。ウニは海藻なども食べますが魚などの肉も食べます。一方、ウニの肛門は上面にあります。私達人間から見るとウニはいつも逆立ちしていることになります。

 ウニは意外に速く歩くこともできますが、トゲで歩くのではなく管足とよばれる先端が吸盤になった、多数の柔らかい足で歩きます。

 ウニはまた、変装の名人です。海藻の破片でも、貝がらでも、砂つぶでも、体の上に上手にのせてしまいます。

 多くのウニは、春から夏(アカウニは初冬)の、それも大潮の日等に、オスとメスがそれぞれ、精子と卵を一斉に出し、海中で受精が行われます。決まった時に一斉に精子と卵を出すことは、受精チャンスを高めるのに好都合ですが、どのようにしてこの時を知るのか不思議です。受精した卵はエキノプルテウスとよばれる幼生になり、しばらく海中を漂うプランクトン生活をしてから、やがて海底へおりて、子ウニになります。

 ウニの卵は汚れた海水では発生が進まず死んでしまいます。それで海水の汚れや安全性を調べるのにウニの卵が使われます。汚れた海にはウニはいなくなるのです。私達の富山湾にも、いつまでもたくさんウニがいてほしいものです。

文:布村
発行:昭和57年8月1日


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