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太冲と西洋数学




1.なぜ西洋数学か

 太冲の真髄は麻田派の姿勢と同じで、天体観測とそれを基にした暦算です。暦算を正確に行うために観測がなされています。当時の天体の観測は、太陽・月・惑星・星の位置を測定することでした。この測定には高さ、方位角など角度と時刻の測定になります。また、日食や月食の進捗状況も角度の測定が必要です。このような角度を測定した後には、それを計算して処理しなければいけません。その時役立つのが三角関数です。当時、三角関数は中国書を通した西洋数学として輸入されました。三角関数を知るためにも、太冲は西洋数学を必要としたのでした。
2.八線表:三角関数

 日本に三角関数表が輸入されたのは『崇禎暦書』で、享保12年(1729)です。当時は八線表と呼ばれました。八線とは正弦、余弦、正切、余切、正割、余割、正矢、余矢の8種類です。最後の正矢、余矢は現在の三角関数では使用されていません。

 石黒信由は「書状遺留帳」によると、寛政十二年二月二十日の太冲あて書状のなかで「八線表下巻御恩借仕度候(後略)」とあり、四月 二十三日 の太冲あて書状には「八線表下巻漸々此間書写仕候ニ付返進申候」とあり、写した上で、返却を行っています。五月 十九日には「先頃八線表下巻返進申候、御請取可被遊と奉存候」とあり、返却されたかどうかを確認しています。それだけ重要な本であったことがわかります。

 金沢測量の折には、太冲所蔵の「八線表」は8桁まであり、それは桁数が多すぎるので、6桁で使用するとあります。金沢測量では、三角関数を駆使して、測量結果を東西南北の成分、高さの成分にわける作業を行っています。これは三角関数を実用化したよい例と言えます。


3.弧三角(球面三角)
 太冲の西洋数学との関わりで最も奥深いものは弧三角(現在で言う球面三角)でしょう。天体の位置や動きは、天が球体であると仮定すると、適切に表現されます。太冲は太陽の位置を天球上で計算し、時刻を定義しました。それには弧三角の公式を使用して計算されました。この公式は現在使用されているものとほぼ同じです。





富山市科学博物館富山市天文台
作成 2007-07-04
最終更新 2007-07-12
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