火星


火星は、地球のすぐ外側を公転している赤い惑星です。直径が地球の約半分しかありませんが、太陽系の星の中では、もっとも地球の環境に似た惑星です。15年ごとに地球から約6000万km以内まで近づき、そのたびにとても明るく見えるようになるため、昔から多くの人の想像力をかき立ててきました。

古代、火星の赤い姿は、ローマ神話の戦いの神様「マルス」の星と想像されました。今世紀初めには、火星に見える黒い模様が火星人の造った運河ではないか、火星には地球よりも高等な生物がいるのではないかと、一部の人が主張しました。SF小説にも数多くとりあげられ、火星には生物がいるかもしれないという期待がありました。早くから人工衛星による探査も始まり、1965年にはアメリカの火星探査機マリーナ4号が火星に達し、表面の様子が撮影されました。しかし、そこには月とおなじようなクレーターがあり、運河のようなものは全く見ることができませんでした。

1976年にはバイキング号が火星に着陸し、火星に微生物がいるかどうかの実験を繰り返しましたが、残念ながら、火星に生物がいる証拠を見つけることはできませんでした。その後も何度も探査機が向かい、詳しく解るようになってきました。南北の極には極冠と呼ばれる、ドライアイスや氷が積もった所があり、クレータや21,300mにも及ぶ巨大な火山、4,000kmにもわたる長い渓谷などがあることがわかりました。

 1996年には驚くべきニュースが世界をかけめぐりました。火星から地球に落下したと考えられる隕石に36億年前の生物の痕跡を見つけたというものです。その証拠として、
(1)微生物が死滅した後にできるPAHと呼ばれる有機物が見つかった
(2)細菌が造る場合が多い磁鉄鉱が見つかった
(3)35億年前の地球の生物の微化石と似ている微生物の微化石らしきものがあった
の三点があげられました。
 これに関しては現在も論争が繰り広げられています。

 1997年にはアメリカの火星探査機マースパスファインダーが、探査機としては20年ぶりに火星表面に着陸しました。自分で動く小型探査車「ソジャーナ」を使って周辺の岩石などを詳しく調べたところ、角が丸い石があることなどから、火星では昔、大洪水があったことがわかりました。また、火星の表面の温度は高い時でもマイナス14度にしかならないこともわかりました。

では、水も凍ってしまうような温度で大洪水はどうして起こったのでしょうか? 火星は昔はもっと暖かかったと考えられています。さらに、火星の地下に水が多くあり、その上を永久凍土と呼ばれる土と氷が交じり合ったものがふたをしていると考えられています。何らかの原因で永久凍土に割れ目が生じ、地下に隠された水が噴水のように噴き出てきて、大洪水を引き起こしたのではないかと考えられています。

 2004年1月4日に、アメリカの火星探査機「スピリット」が、1月31日に「オポチュニティ」が火星着陸に成功しました。共に2003年6月、7月に打ち上げられました。これは1976年のバイキングが、1997年にマーズパスファイダーが着陸してから3台目、4台目の着陸船になります。
 スピリットは直径166キロのクレーターの内部、オポチュニティは平原に着陸しました。以前、他の探査機が着陸した場所より、平らになっており、大きな石がありません。
 現在、ロボット自動車と言える探査自動車が動いています。それが岩の成分などを分析しています。その最も求めているものは水です。2台の探査機はそれぞれちょうど火星の反対側に着陸しましたが、共に水があったのではないかと言われている場所です。実際、今回の探査では、着陸のため使用したエアバックの布をひきずったところが、粘土のように水を含んでいることがわかっています。
 スピリットは岩を磨いて、新鮮な面を出し、探査しています。では、スピリットが最初に探査しようとした岩はなんという名前がついたでしょう。なんと、サシミとスシと名付けられました。そのような形をしていたからでしょうか?。ただし、この石は砂やほこりがたくさんついていたので、探査はされませんでした。

 この他、1996年にアメリカが打ち上げた「マーズグローバルサーベイヤー」と2001年にアメリカが打ち上げた「マーズオデッセイ」、2003年にヨーロッパ宇宙機構が打ち上げた「マーズエクスプレス」の三機の火星探査機が、火星の周りを回りながら火星の表面の探査を行っています。2006年3月10日にはアメリカの火星探査機「マーズリコネッサンスオービター」も火星の周回軌道に入り、同年11月から火星の大気や気候、地形などを精査する予定です。さらにアメリカは2007年と2009年にも火星探査機の打ち上げを計画しています。
 これらの探査機の探査により、火星のより詳しい姿が明らかになることが期待されます。

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