ミール

「ミール」とは

ミールは1986年2月に打ち上げられたロシアの宇宙ステーションで、名前は「平和」を意味します。最近のロシアは宇宙開発をこのミールを中心に行ってきました。いわば、ロシア宇宙開発のシンボルです。設計寿命は3~5年のところ、何度もの修理で15年間使われてきましたが、2001年3月で役目を終えました。ロシアの議会や市民からは残念がる声もありましたが、地上に落下して被害を出さないことを優先し、建設したロシア宇宙局の手で南太平洋の空に消えていきました。
ミールは「モジュール」と呼ばれる、筒のような形で大型トラックほどの大きさの部品をドッキングさせることができ、最後には写真のように、6つのモジュールと2つの輸送用宇宙船からなる宇宙ステーションとなりました。1990年12月には秋山豊寛さんがミールを訪れ、日本人初の宇宙飛行士となっています。(画像提供 NASA)

ミールの各モジュール

モジュール名 打上げ年 機能
基幹モジュール 1986年 電力や通信など全体に関わる基本的機能。宇宙飛行士の生活のための設備
ソユーズTM 随時 宇宙飛行士の地上との往復のための宇宙船。緊急脱出時にも使用
プログレスM 随時 ミールへ物資を運ぶための無人の宇宙船
クワント 1987年 天体観測、ミールの姿勢制御
クワント2 1989年 宇宙飛行士の生活のための設備、姿勢制御、エアロック
クリスタル 1990年 宇宙環境での生物学的実験や材料実験
スペクトル 1995年 大気や資源などの地球観測
プリローダ 1996年 自然環境など、地球の調査

ミールの成果

ミールの最大の成果の一つが、宇宙で長期間生活するための技術を開発したことです。これは将来の月面基地や火星旅行になくてはならない技術です。アメリカの持ついちばん長い記録が84日間であるのに対し、世界最長はミールでの437日と17時間で、ポリャコフ宇宙飛行士のものです。ポリャコフ宇宙飛行士は医師で、医学実験や宇宙飛行士の健康管理を行い、筋肉トレーニングや食事、休息の指導などを行って、宇宙での長期間の生活を可能にしました。宇宙ステーションに人が住み続けるには、必要な物を地上から届けるシステムや、宇宙で放射線が増えるなど危険な時に避難するための宇宙船、故障や事故があったときに対策を考えて必要な物を作り、すぐに届けて修理する体制など、多くの作業を地上との密な連携で行う必要があります。しかし、ミールは15年の歴史の中で、亡くなった人どころか大けがをおった人さえいませんでした。
ミールにはロシアばかりでなく、日本、アメリカ、フランスなど10以上の国から宇宙飛行士が訪れ、のべ100人以上が滞在しました。実験の依頼を含めると、アメリカのスペースシャトルと同じく、世界各国に利用されたといえます。
実験や観測は数多く行われました。X線を出す天体の観測、サラダ菜などの植物の栽培実験、ウズラの飼育などの動物実験、公害状況や自然環境を見る地球の観測、半導体材料の製作などの材料実験などです。
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