富山市科学博物館 > ジュニア科学賞・とやま> 第7回[平成21年度]
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雨の日も風の日も雪の日も、6年間ほとんど毎日富山大橋で野鳥観察を続けている。鳥に対する愛情があり、情熱をもって研究に打ち込んでいる努力人。工事や台風でフィールドの環境が破壊され、鳥がいなくなるというつらい経験も乗り越え、新しい環境に再び鳥が戻ってきた喜びを味わう。今日もまた、双眼鏡を持った若き鳥の研究者は富山大橋に立っている。
6年間全シーズンを通じて行った観察結果は、児童のものとは思えない粘り強い努力の賜で、野鳥の習性や生態についての考察を確かなものにしている。大きな環境の変化が、そこに生息する野鳥にどのような影響をもたらしているのかを明らかにし、人間を含めた生物の環境とのかかわりについて考えた点がすばらしい。また、野鳥の識別能力を早くから身につけていることは見上げたものである。これらの裏には鳥への深い愛情と飽くなき研究心が読み取れる。
花の色が時間とともに変化するセイヨウフウチョウソウに出会って以来5年間、この植物の特徴の把握とその仕組みの解明に挑んでいる。次々と不思議を投げかけてくるフウチョウソウに生物の魅力を感じながら、楽しんで研究を深めている。しばしば、生物の行動観察に夢中になるあまり、不自然な姿勢のまま微動だにしなくなってしまうことがあるという。
小さな変化もしっかりととらえられる根気強い観察の継続が、花色変化のメカニズムや花びらの形が変化する仕組みについての研究を確かなものにしている。日本の生態学的な常識からは推論できない南米原産の植物の生態について、仮説を立て、柔軟な発想やアイデアを盛り込んだ実験方法を構築し、根気強い観察によってデータを蓄積して問題を解決している。対象に働きかけ続け、真実に向かう姿はとてもすばらしい。
中学1年の時に、カエデの果実が回転しながら落下することで滞空時間を稼いでいることに魅せられて以来、「飛ぶたね」に興味をもつ。カエデやアオギリなど、単純な構造でありながら空中で回転を生み出すことができる原理について研究をすすめている。条件を変えて繰り返し実験を行い、丁寧な解析によって結論を導いてきた。
飛ぶ果実がその形にたどりついた理由を物理的な側面から根気強く分析している。アオギリの心皮についている種子の位置と個数から重心を求め、心皮の中心軸とのずれから回転方向が決まることを発見した。また、心皮がボート型をしていることが落下面を決定し、さらに心皮の先端の反り方が回転のしやすさと滞空時間に影響することを見つけるなど、自然を観察する力があることがうかがえる。今後、野生状態の植物の適応戦略に迫る研究に発展していくことが期待できる。