アゲハチョウの羽化時期

 アゲハチョウは寒い冬の間を蛹で過ごし、春暖かくなってから成虫が羽化します。ところが、あるところでは、年中、もちろん冬も成虫が羽化しています。野外と同じ状態で飼育してもこうはなりません。どうして年中成虫が羽化するのでしょうか。一つは温度です。年中24℃ほどに保ちます。しかしそれだけでは冬にも成虫が羽化してくるというわけにはいきません。もう一つの秘密は光です。年中1日のうち16時間を光を点け後の8時間を暗くしているのです。アゲハチョウには、秋に(日が短くなってきたころ)成長した幼虫は蛹のままで長い間ほとんど活動を止めていて一度は低い温度に遭わないと羽化しない性質があります。この活動を止めている状態を休眠状態と言います。休眠状態の蛹は普通の蛹に比べ寒さや乾燥に強くなります。昆虫にとって厳しい季節である冬をうまく過ごせるようになっているのです。休眠から覚め活動を再開するには一定の寒さに遭うことと一定の期間が必要です。この性質のおかげで暖かい日が続いたからといって食べ物の無い冬の間に成虫が羽化してくることはありません。この性質を逆用して、明るい時間を長くして休眠に入らないようにしているのです。動物ばかりではなく植物のキクなども光と温度の調節で花の咲く時期を変えることが出来ます。正月にキクの花が見られるのは、電照菊といってビニールハウスの中で光を当てる時間を調節して作られるものです。生き物は、自然の条件に合った仕組みを持っているものですが、その仕組みは固定的なことが多く臨機応変に替えるという訳にはいかないようです。そこがわれわれ人間との違いであり長所でもあり短所でもあります。人間は生き物のそういう点を見つけコントロールし利用します。やはり、人間の方が一枚上手と言うことでしょうか。


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