蜂の形と生活はどう変わってきたか

歴史を知って今を知る。広い勉強も大切だ

 展示は、個々の事柄を示すと共に、それらを関連付け総合して示されねばならない。そのためには、個々の事象とともに、それを結びつける関係について広く学び理解することが必要だ。総体を知ることで個々をより良く理解も納得もできるものだ。そのためには書物によって広く先人に学ぶこともまた重要である。

 例えば、「蜂」。体が黄褐色で細長く、腰がくびれ足が長い、お尻の針で刺す蜂―アシナガバチ類―を思い浮かべる人が多いのでは?もしくはミツバチ?甘い蜂蜜の生産者として知らぬ人も無いだろう。ミツバチも腰がくびれ針で刺す蜂で、「蜂」というと腰のくびれた針で刺すものというイメージが定着している。

 しかし、蜂の仲間には腰のくびれも無ければ、刺す針も無い蜂もいる。ハバチ類やキバチ類がそうである。これらの蜂は、幼虫が木の葉を食べる(ハバチ)もしくは木の幹の中を食べる(キバチ)蜂の仲間で、成虫は木の葉や幹に卵を産み付けるだけで幼虫はほったらかしである。

 ハバチのような蜂からミツバチがどうやって現れてきたのか。これは非常に面白い、想像力を刺激する問いである。

 書籍から得た知識を一筋にまとめると、こうなる。ハバチ類・キバチ類から、昆虫を幼虫の餌にする寄生蜂(ヒメバチ類やコバチ類)が現れた。生きた昆虫に卵を産み付けようというのだから器用な動きをする腹部が必要になる。腰のくびれた蜂の登場だ。こんどは、産卵管を麻酔用の針に変え昆虫に麻酔をかけ卵を産む蜂が現れる。

 幼虫の安全のため巣を作るようになると立派な狩人蜂(ジガバチ類やドロバチ類)。古いタイプの狩人蜂は餌を狩ってから巣を作るが、巣を作ってから狩りをするタイプが現れ、最初に幼虫の餌を一度に全部与えるタイプから随時餌を狩り幼虫に少しずつ与えるタイプがあわられてくる。アシナガバチ類やスズメバチ類はこのタイプ。

 狩人蜂がハネと針を無くすと蟻になる。

 また、狩人蜂の一部が幼虫の餌を花粉と花蜜に変え舌を長くするとハナバチ類(ミツバチの仲間の蜂)の誕生となる。蜂の進化の歴史を知ると、体の一部の形にも生活の変化の歴史が隠されていることが判り、ますます蜂が面白くなってくる。 


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