「楽しい昆虫採集」 奥本大三郎 ・岡田朝雄著   草思社 ¥2,000

 

 これは、大人のためガイドブックである。一時、いや結構長い間、昆虫採集は、「害悪」である、自然破壊の元凶である、と目の仇にされ、「夏休みの宿題に、虫を殺す昆虫標本はいけません。」と先生に言い渡された子供たちもいたものだ。今でもそのなごりはまだまだ強くあるが、最近、採集家たちの巻き返しが始まり、昆虫採集も再度世間に認知されるようになってきたようだ。昆虫採集は「害悪」であるとの風潮からかどうかは知らないが、最近までこれはという昆虫採集のガイドブックは見あたらなかった。本書は、昆虫採集家の巻き返しの一法として出されたものだけあって、内容は充実している。始めに「人はなぜ虫を採るか」という一連の読み物で、昆虫採集の意味、意義をおもしろくかつ鋭い文で説く。次いで、代表的なグループごとに、採集の仕方、標本の作り方、飼育の仕方、それらに必要な道具の紹介をする。それに加えて、採集禁止種のリストや全国の同好会や博物館の紹介などいたれりつくせりでる。これ一冊であなたも一流の昆虫採集家になれる。かどうかはあなたしだい。願わくば昆虫採集のよりいっそうの復権を。

根来 尚

 


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