ファーブル昆虫記

 

 ファーブル昆虫記は昆虫関係の有名な古典である。大杉 栄のものを始めとして、さまざまな翻訳も多数でている。ここでわざわざ取り上げるのはどうかなと思われる方も多いだろうが、奥本氏訳の本書は今までのものとは少し異なる。奥本大三郎氏はフランス文学者でありかつ大の昆虫愛好家である。ファーブル昆虫記を翻訳するのにまことに最適の人である。本書ではファーブルの翻訳をしただけでなく、奥本氏によるファーブルの研究の解説といった趣で、ファーブルと奥本氏の共著といった様子である。また、ファーブルの活躍した場所の風景写真やファーブルの取り上げた昆虫の生態写真が多く載せられていて、それらの解説も有り、よりわかりやすく親しみやすくなっている。一応、子供向けということになっているが、大人が読んでも充分楽しめる。暇なときにひもといて、子供のころを思いだし、昔ともに遊んだ昆虫が、今どうなっているかに思いをいたしてみよう。

根来 尚


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