ゲンジボタル

 

1.形態

成虫:体長はオス15mm前後、メス18mm前後。体は黒色。前胸背は赤色で黒色の    十字形の紋がある。発光器はオス6,7腹節、メス6腹節にある。(ヘイケでは、   オス8mm前後、メス10mm前後。前胸背の黒紋は太いI形。)

卵:直径0.5mm、淡黄色。(ヘイケでは、0.6mm。)

幼虫:孵化時、2mm、終令、20−30mm。(ヘイケでは、終令17mm前後。)

蛹:10−20mm、乳白色。(ヘイケでは、10mm前後。)

 

2.生活史

5月下旬より6月にかけ羽化したメスは、交尾後、川岸の苔などに卵を産みつける(1頭につき500個前後)。成虫の寿命は1週間ていどである。集団明滅の周期は2秒(東日本タイプでは4秒である。)。草の露をなめるていどで餌は食べない。

 卵は約1カ月後、7月に孵化する。孵化した幼虫は、すぐ水中に入る。幼虫は約10カ月、カワニナを食べ成長する。6回脱皮し、終令幼虫となる。終令幼虫は、4月中・下旬の雨天の夜、上陸し、土中に潜り蛹化する。約50日後羽化する。

 

3.生息環境条件

幼虫:年中枯れることなく汚染の無い流水。水温は低く(25度を越えない)、溶存酸素   が多い必要がある。殺虫剤・殺菌剤・除草剤など、合成洗剤などは不可。

   餌となるカワニナが多いこと。

   川の3面コンクリートや鉄板の矢板は不可(隠れ家、カワニナの生息、産卵場所、   蛹化場所等の関係で)。少なくとも底面は石もしくは石と砂地、板や石積みの護    岸のほうがよい。蛹化場所となる土手が必要。

成虫:水辺に産卵場所となる湿った苔類が必要。明るい場所を避けるので、灯火のない暗   い場所で成虫の隠れ場所となる草地、樹木が必要。

 なお、カワニナの生息環境条件は、ゲンジボタル幼虫と同様であるが、そのほか、捕食者であるコイが生息していないことが必要。

(別紙参照のこと)

 

4.地域間の移動について

 ホタルのように地域間の移動交流が少ない生き物は、地域間でその形態、生態など遺伝的に異なっていることが多い。

 ゲンジボタルについても、関西、関東およびその中間地域で発光サイクルが違うことが知られている。また、東北地方のものは、亜種とすべきほど形態が異なっているといわれる。その他にも、まだ知られない変異がある可能性は多く、また、遺伝子構成など未知な点も多い。

 地域間の移動、混合は、本来の生息地の性質を混乱させ、また、生物学的な混乱をきたす可能性が高く、望ましい事ではない。

 

 

 

ゲンジボタルの生息環境

 

1.生活史

5月下旬より6月にかけ羽化したメスは、交尾後、川岸の苔などに卵を産みつける(1頭につき500個前後)。成虫の寿命は1週間ていどである。集団明滅(離散的個体の明滅ではない)の周期は2秒(東日本タイプでは4秒である。また、長野県、静岡県には3秒のタイプがいる。)。草の露をなめるていどで餌は食べない。

 卵は約1カ月後、7月に孵化する。孵化した幼虫は、すぐ水中に入る。幼虫は約10カ月、カワニナを食べ成長する。6回脱皮し、終令幼虫となる。終令幼虫は、4月中・下旬の雨天の夜、上陸し、土中に潜り蛹化する。約50日後羽化する。

 

2.生息環境条件

幼虫: 年中枯れることなく汚染の無い流水。水温は低く(25度を越えない)、溶存酸   素が多い必要がある。殺虫剤・殺菌剤・除草剤など、合成洗剤などは不可。

    餌となるカワニナが多いこと。

    川の3面コンクリートや鉄板の矢板は不可(隠れ家、カワニナの生息、産卵場所、   蛹化場所等の関係で)。少なくとも底面は石もしくは石と砂地、板や石積みの護    岸のほうがよい。蛹化場所となる土手が必要。

成虫: 水辺に産卵場所となる湿った苔類が必要。明るい場所を避けるので、灯火のない   暗い場所で成虫の隠れ場所となる草地、樹木が必要。

(別紙参照のこと)

 

3.地域間の移動について

 ホタルのように地域間の移動交流が少ない生き物は、地域間でその形態、生態など遺伝的に異なっていることが普通である。

 ゲンジボタルについても、関西、関東およびその中間地域(長野県、静岡県)で集団明滅の発光サイクルが違うことが知られている。また、東北地方のものは、亜種とすべきほど形態が異なっているといわれる。その他にも、まだ知られない遺伝的変異がある可能性は多く、遺伝子構成(DNA配列)など未知な点も多い。

 地域間の移動、混合は、本来のホタルの性質を混乱させ、そのため、生物学的系統的な混乱をきたす可能性が高く、望ましい事ではない。(上高地、梓川への養殖イワナの放流の例がある。)

 

4.ホタル生息地・生息数の増加のために

上記1で記した生活史が全うできるよう、2で記した生活条件をできるだけ満たす努力が必要である。

 用水の年間通水を確保する。現在以上のよい水質の確保(農薬・除草剤・合成洗剤などの使用をひかえる)につとめる。砂礫の川底や土手を確保し、草刈・苔の除去・樹木伐採を最小限にするといったことが必要である。

なお、富山市上今町で、ゲンジボタルが多く発生することが知られるようになったが、こうした場所での保護、増殖を考えるのも一法である。

 

 


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