カオジロトンボ

 立山の魅力は、その高さと眺望。それに加えて、湿原に展開するさまざまな生き物にもある。池塘(ちとう)の周りのミズゴケの上やイグサの茎の上に、2cmほどのカオジロトンボの羽化殻がたくさん見つかる。運がよければ羽化しつつあるところを見ることができる。羽化してすぐのトンボはじっとして体やハネの固まるのを待っている。体やハネの固まるとスイスイと飛んで池塘から離れていく。少し離れた林へいくらしい。成熟すると再び池塘へ戻ってくる。オスの方が早く戻るようで、交尾が見られるころにはオスのほうが多い。オスはイグサやミズゴケの上にハネを広げて止まり、縄張りを張る。交尾は8月に入ってから多く見られる。トンボの交尾は他の昆虫とはちょっと違い、雌雄が直接腹端を合わせることはしない。オスは実際の交尾に先だち、腹端の生殖口から精子を腹部第23節の交尾器に移しておく。その後、メスの腹端とオスの交尾器を合わせて精子を受け渡す。


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