以下は、「採集」について批判的ご意見が述べられていたお便りに対する返事です。

 

拝啓

 お便りありがとうございました。

さて、センターに採集したトンボを寄贈されている方があるかどうかというお尋ねですが、あるご家族の方々が親子で県内のトンボの調査をし、毎年県内のトンボ相に関し興味ある種の寄贈をセンターにしていただいております。そのおかげで、県内のトンボ相の解明も大いに進み、また、センターの標本も充実したものとなってきました。

また、もう一点、採集せずに写真のみで良いのではということですが、たとえトンボ類のように、もうすでに日本のものはすべて解っていると思われているグループでも、まだ未記載の新種が現れます。たとえばカワトンボ類では、県内丘陵から山地に普通にいる“ヒウラカワトンボ”はまだ未記載であり(ただしこのグループの分類についてはいろいろな立場がありすべての研究者の意見が同じではありませんが)、また、他のグループでも“亜種”区分や、地域の変異とその意味などの解明はまだまだです。実物の標本はこれらの問題の解決の根本を為すもので、しかも、少数の産地・少数の個体ではどうにもなりません。また、かってはーーーーであったと思われていた種が、実は++++であったということは極普通にあることであり、それも実物の標本がなければそうであるかどうかがわからないことになります。博物館は、各種の実物標本を集積し、自然物の存在の証拠を未来に伝える役割があると思います。

以上で疑問へのお答えとなりますでしょうか。

このようなご指摘は大変ありがたいことで、博物館の業務の再認識に役立たせていただきます。今後とも、お気づきの点ご教示賜りますようお願い申し上げます。

敬具

                         富山市科学文化センター

                         昆虫担当学芸員 根来 尚

 


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