天道虫
テントウムシ 天道虫早春からみられるテントウムシ
3月になると、「啓蟄(けいちつ)」という言葉を聞かれることと思います。啓蟄とは、春分、夏至、秋分、冬至などを含む二十四節気の一つで、3月6日の頃です。地中で冬ごもりしていた虫が地上に姿を現す日とされています。
しかし、富山県で3月6日ではまだ早すぎるようで、虫の出現は年によって違いますが、早くて3月の中旬、通常は3月下旬でしょう。
3月も中旬を過ぎると、ようやく暖かい日が続くようになります。春の光に誘われるように、成虫で冬越しをしていた虫たちが姿を現します。
おなじみのテントウムシも、そんな昆虫の一種です。私が最も早くテントウムシを見たのは、3月20日オオイヌノフグリの花上で見たナナホシテントウでした。またヒメアカボシテントウが3月25日ごろ、日の当たる桜の木の幹上をチョロチョロと歩いているのを見ました。しかし、ちょっと日が陰るとやはり寒いのか、木の肌のちいさな窪みでじっとしていました。
いろいろいるテントウムシ
テントウムシというと、体長7mmほどで赤地に7つの黒い紋があるナナホシテントウを思い浮かべる人が多いかもしれませんね。それ以外にもテントウムシには多くの種類があります。ヒメアカボシテントウは、4mmほどの小さなテントウムシで、黒地に赤い小さな紋を2つ付けています。体長10mmを越え、赤と黒の亀の甲のような紋があるたいへん大きなカメノコテントウ。カメノコテントウを小さくしたような、4mmほどのヒメカメノコテントウ。そして、最も普通に見られるのがナミテントウです。ナミテントウは体長7mmほど、黒地に赤い2つの紋や4つの紋、赤地に黒の19紋、黒紋の全く無いものなど、これが同じ種なのかと驚くほど斑紋の変異があります。その他にも、テントウムシの仲間の種類は多く、富山県からは29種も知られています。
テントウムシは目立つ
いろいろいるテントウムシですが、どれを見ても赤と黒の模様で、木の枝や葉の上でいるとよく目立ちます。しかも、天道虫の名に違わず、お天道様(太陽)のもと白昼堂々と枝や葉の上で歩き回っています。小鳥などに捕まって餌にされてしまわないのでしょうか。
テントウムシを捕まえると、足の関節から黄色い液が出てきます。テントウムシはかわいいけれど、あの液がいやだという人もいるでしょう。この液には、アルカロイドと呼ばれる物質が含めれ、特有の臭いと苦みがあり、小鳥やアリなどはこの液を嫌います。それで、テントウムシは捕まって餌にされてしまわないのです。
テントウムシは、目立つ色と模様で”私は食べられない虫ですよ”と宣伝しているのです。
テントウムシの越冬
さて、春早くからあらわれるテントウムシは冬の間どこにいたのでしょうか。
テントウムシは、多くの個体が集まって、集団で越冬する事がよく知られています。石の下や落ち葉の下、木のうろの中、山小屋の壁などで集団で冬を越します。
もう、5年ほど前になりますが、立山町の標高500m程の谷間、晩秋のよく晴れた暖かい日、斜面を吹きあがる風に乗って、谷底から湧き出るように舞い上がっていったナミテントウの集団を目撃したことがあります。こんなにたくさんどこにいたのかと思う程、辺り一面飛んでゆくテントウムシでいっぱいでした。ほんの数分でその飛翔は終わってしまいました。その時は、これはいったい何事が起こったのかと驚いていたばかりだったのですが、今考えてみると、これはテントウムシの越冬地への集団移動だったのではないでしょうか。その集団がどこで越冬したのか解りません。一度は壁面いっぱいのテントウムシを見てみたいものです。
(根来 尚)