ツヤハナバチの関係を探る

   ―予想をつけて調べてみれば―

 5月、山道の林縁部のタニウツギの枯れ枝の折れ口から細かな髄くずがモコモコと出て来るのを見つけた。何事かと眺めていると、髄の穴の中から小さな蜂のお尻が見えてきた。ツヤハナバチの仲間の蜂が巣作りの真っ最中である。

 ツヤハナバチの仲間は富山では6種いるが、どれも枯れ枝の折れ口から髄質に細いトンネルを掘りこんで巣にする。体の大きさから見ると3グループに分けられる。最も大きいのがヤマトツヤハナバチ(以下ツヤハナバチは省くことにする)、中くらいのがキオビとクロ、小さいのがエサキとイワタとサトウ。平地ではヤマトとキオビとイワタが採集されている。クロとエサキは少ないが山手にいるらしい。

 判っていたのはこれくらい。ここから、この6種の関係について一つのストーリーを考えた。ツヤハナバチの仲間6種は、折れ口の露出した枯れ枝を巡って競争的関係にあるに違いない。大きさの似たものどうしは営巣場所を違え、大きさの違うものどうしは営巣時期を違え、そのおかげで6種が共存できているに違いない。しかも、大きい種ほど営巣開始時期は早いだろう。大きい種が先に枯れ枝に巣孔を掘りこみ始めても、大きな種の利用できない細い枝は残されるが、小さい種が先に巣孔を掘りこみ始めると大きな種の掘りこめる枯れ枝が残らないではないか。

 さて、そう考えながら各地でツヤハナバチの仲間を採集し、標高と周囲の環境の異なる数カ所では一年を通じての調査を行った。その結果は、最も大きいヤマトは平地から山地まで、中型のクロは山地に、同じく中型のキオビは平地から丘陵に、小型のエサキは山地に、イワタとサトウは平地から丘陵にいて、山地ではヤマト、クロ、サトウの順に営巣を始め、平地ではヤマト、キオビ、イワタ・サトウの順であった。小型のイワタとサトウはどうしたか?これはより暗い場所と明るい場所の営巣場所の差であった。また、クロとキオビ、エサキとイワタが共に見られる場所もあるが、クロとエサキがより暗い場所、キオビとイワタがより明るい場所にと営巣場所に差があった。予想したとおりの結果であったには、私はむしろ驚いてしまった。


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