蝶と蛾
蝶と蛾をあわせて、鱗翅目(りんしもく)(または
チョウ目ともいう)という一つのグループをつくって
います。鱗翅目は、世界では約14万種が知られ、約
20の上科に分けられています。
そのうちの二つの上科、セセリチョウ上科とアゲハ
チョウ上科が蝶と呼ばれています。この2上科約2万
種の蝶以外を全てまとめて蛾と呼んでいます。
蝶の分類学上の位置
(例)モンシロチョウ
昆虫綱(こんちゅうこう)
鱗翅目(りんしもく)
アゲハチョウ上科
シロチョウ科
モンシロチョウ属
モンシロチョウ
蛾と蝶の違いは、一般的には次のようにいわれています。
●蛾は夜活動し、蝶は昼活動する。
●蛾ははねを伏せて止まるが、蝶ははねを合わせて止まる。
●蛾の腹部は太いが、蝶は細い。
●蛾のはねの色彩は地味だが、蝶は華麗なものが多い。
●蛾の触覚は櫛の歯状か糸状だが、蝶は棍棒状。
しかし、イカリモンガやキンモンガのように日中活動
する蛾もいますし、イカリモンガははねを合わせて止ま
ります。シャクガの仲間の腹部は細く、セセリチョウの
仲間の腹部は太く、セセリチョウやヒカゲチョウの仲間
は地味で、派手な色彩の蛾も多くいます。棍棒状の触覚
がある蛾もまれにいます。
このように、蛾と蝶に基本的な違いは無く、習慣的に
分けているにすぎません。強いて違いを探せば、日本国
内の種に限っていえば「蛾の触覚は櫛の歯状か糸状だが、
蝶は棍棒状。」が違いと言えるでしょう。
日本の蝶
約230種の土着種と約60種の迷蝶が知られています。
南北に長い日本では、奄美・沖縄以南と九州以北とで、生息
する蝶に大きな差があります。
奄美・沖縄地方では、東南アジアと関連の深い亜熱帯地域の
蝶が、九州以北では北部アジアと関連の深い蝶が生息していま
す。
九州以北でも北海道と本州以南とで差が見られ、北海道では
シベリア地方とより深い関連が見られます。
富山の蝶
富山県からは、現在125種の蝶が知られています。
平地や丘陵地では、アゲハ・キアゲハ・モンシロチョウ・
モンキチョウ・ベニシジミ・ルリシジミ・キタテハ・イチ
モンジセセリなど国内に広く分布し明るい草地に生息する
蝶が多く、山地では、ミヤマカラスアゲハ・ウスバシロチョ
ウ・エゾスジグロシロチョウ・ミドリシジミ類・テングチョ
ウ・サカハチチョウ・ヤマキマダラヒカゲ・アオバセセリ
など森や林縁に生息する蝶が多く、高山や亜高山では、ミ
ヤマモンキチョウ・コヒョウモン・ベニヒカゲ・クモマベ
ニヒカゲなど本州では分布が高地に限られる蝶がよく見ら
れます。
これらの蝶の顔ぶれの特徴をまとめると、富山県の置か
れている位置や地形、気候などの環境から、本州に分布す
る蝶の約
75%が見られること、北海道とも共通する北方系の蝶が多く、高山蝶が多いこと、草原の蝶が少なく、また
乾燥地の蝶が少ないこと、少数ですが沖縄とも共通する南
方系の蝶で分布の北限付近となっている種のあること、と
いえるでしょう。