富山市科学博物館 > OnLine図書室 > とやまと自然 > 20巻夏(通算78号)1997 HTML版 > 02


とやまと自然 第20巻 夏の号(1997年)
古洞の森の自然と野鳥たち

南部久男

幻想的で静かな古洞池、複雑に入り組んだいくつもの谷、ドングリのなるコナラやアカマツが生える雑木林、シジュウカラやメジロが飛びかう林、天文台のある古洞池の森は、色々な生き物に出会いながら、四季折々の素晴らしい自然を満喫できます。

どんぐり橋から池を見渡してみよう
 水面から出た枯れ木、静かな湖面を飛び交うカワウ、古洞池は不思議な雰囲気をかもし出します。どんぐり橋からの眺めはすばらしく、林を一望することができます。林には、ドングリのなるコナラや大きな葉のホオノキ、アカマツなどの高い木や、コシアブラ、リョウブ、ヒサカキなどの低い木が生え、遊歩道を歩くと富山県の雑木林の代表的な木を見ることができます。早春には、葉を落とした林にピンク色のキンキマメザクラの花や白いコブシが目を引きつけます。


林や池で出会う野鳥たち
 ドングリ橋をわたり、池の周りの遊歩道を歩くと、木々の間をシジョウカラやヤマガラ、メジロ、エナガなどの小鳥たちが年中飛びかっています。「ホーホケキョ」、「キーコキーコ」と、春にはウグイスやイカルの声が林に響きわたります。林の中では、夏鳥のキビタキやオオルリのさえずりが聞こえることもあります。「ジ−ジ−ジ−」、ハルゼミの鳴き声は、野鳥よりもよく聞こえ、うるさいくらいです。夜、天文台の帰り道に耳をすませると、「ホーホー」、「キョキョキョ」とフクロウやヨタカの声も暗い林から聞こえてきます。早春から初夏にかけて、古洞の森は野鳥たちでにぎわいます。



 新緑から暑い夏を経て、雑木林の木々が葉を落とす秋になると、夏鳥たちが去っていき、今度はツグミやアトリなどの冬鳥が姿をみせます。「ヒッヒッ」と鳴くジョウビタキが天文台や道路のまわりの開けた所で姿をみせることがあります。山地から里山におりてきたキツツキの仲間のアカゲラが湖面からでた枯れ木の穴から顔を出していることもあります。林の中では、シジュウカラ、ヤマガラ、エナガ、ヒガラ、コガラ、メジロ、コゲラが群をなして、餌を求めて枝から枝へと渡っていくのに出会うことがあるかもしれません。
雪がしんしんと降る冬には、湖面にたくさんのカモが浮かんでいます。「ガーガーガー」というマガモの大きな声や、「ピツーピツー」とコガモの高い声が古洞池に響きわたります。晴れた日、葉を落とした木々のすきまからは、雪化粧した立山連峰が雄大な姿をあらわします。青空を見上げると、ワシタカの仲間のミサゴやオオタカが舞っている姿をみることがあるかもしれません。

 古洞の自然は、一度、二度、三度・・・とやってくる度に皆さんを静かに出迎え、楽しませてくれることでしょう。天文台に立ち寄り、四季折々の古洞の自然や野鳥に出会ってみて下さい。


古洞でよく見られる野鳥
場所季節野鳥
林(遊歩道や
道路沿い)
年中コゲラ(キツツキ科)、ヒヨドリ(ヒヨドリ科)、モズ(モズ科)、ウグイス(ヒタキ科)、エナガ(エナガ科)、ヤマガラ・シジュウカラ(シジュウカラ科)、メジロ(メジロ科)、ホオジロ(ホオジロ科)、カワラヒワ・イカル(アトリ科)、カケス(カラス科)
夏鳥として渡来:サンショウクイ(セキレイ科)、ヤブサメ・キビタキ・オオルリ(ヒタキ科)
秋〜春冬鳥として渡来:ジョウキビタキ・シラハロ・ツグミ(ヒタキ科)、カシラダカ(ホオジロ科)、アトリ・マヒワ(アトリ科)

山地から移ってくる:アオゲラ・アカゲラ(キツツキ科)、コガラ・ヒガラ(シジュウカラ科)、アオジ(ホオジロ科)、ウソ(アトリ科)
春と秋夏鳥として渡来し、山地との移動時に見られる:クロツグミ・メボソムシクイ・センダイムシクイ・コサメビタキ(ヒタキ科)

越冬期の暖地への移動の時に見られる:ビンズイ(セキレイ科)
年中カワウ(ウ科)、カイツブリ(カイツブリ科)、カルガモ(ガンカモ科)
秋〜春冬鳥として渡来:マガモ・コガモなど(ガンカモ科)
ダムや建物
の周り
年中スズメ(ハタオドリ科)、ハクセキレイ・セグロセキレイ(セキレイ科)、ハシボソガラス・ハシブトガラス(カラス科)
春〜秋夏鳥として渡来:ツバメ(ツバメ科)
年中ミサゴ・トビ・オオタカ(ワソタカ科)

(脊椎動物担当 なんぶ ひさお)
第20巻 夏の号 目次

富山市科学博物館
最終更新 2008-03-25
Copyright(C)1997-2008 Toyama Science Museum, TOYAMA (JAPAN) All rights reserved