富山市科学文化センター > OnLine図書室 > 収蔵資料目録 > 津田コレクション


津田コレクション
--マングローブ沼産貝類・化石コレクション--
1.寄贈のいきさつ
 津田禾粒先生は京都大学在学中、また新潟大学教養部地学教室で教鞭をとるかたわら、今日にいたるまでの50余年間、一貫してマングローブの研究を続けてこられた。その研究は、系統分類学的な研究から始まり、マングローブ沼の自然環境が生物に与える影響などの研究へと進み、さらに地球環境問題などへと発展していった。その中で、現生のマングローブの貝類標本は、6千点余りにもおよんだ。また、海外のマングローブ沼の研究のために訪れた国々でも、機会を見つけては野外へ出かけ、めずらしい化石などを収集された。
 平成4年(1992)1月に同大学長を退任されるにあたり、この収集した標本類や文献類などについて、先生の出身地である富山県にある博物館施設にその標本を保管してもらいたいとの先生の御希望で今回の寄贈の運びとなった。

2.寄贈品の概略
 今回の寄贈品は、大きく標本類と書籍類に分けられる。標本類については、東南アジアのマングローブ沼の現生貝類標本、富山県・新潟県の新生代第三紀貝類化石類およびイギリスやナイジェリアを中心にした外国産化石類からなり、書籍類は主に学会誌、国内外の研究者の論文の別刷と若干の単行本である。総点数については11,112点であり、その内訳は以下のようになっている。

標本類 (8,275点)
1.マングローブ沼の現生貝類標本6,075点
2.国内産化石標本類(富山県、新潟県産化石)2,100点
3.外国産化石150点
書籍類 (7,837点)
1.雑誌(古生物学会誌他)737点
2.別刷論文約7,000点
3.単行本(国内外の地質関係書籍)約100点

A)標本類
1)マングローブ沼の現生貝類標本類
 この標本類は、津田禾粒氏、糸魚川淳二氏(名古屋大学名誉教授)、山野井徹氏(山形大学教授)の三氏が、昭和55年(1980)から昭和61年(1986)にかけて、横田力氏(富山市在住)の経済的な支援をうけて、主に東南アジア地域のマングローブ沼で採集した現生の貝類標本類である。採集地は、主に、沖縄本島(石川)・香港・セブ島(フィリピン)・ペナン島(マレーシア)・クラン,テンガー両島(マレーシア)・ニューカレドニア・シンガポール・ジャカルタ(インドネシア)・バリ島(インドネシア)・パラオである。
 現生の貝類は、化石種との分類学的比較、あるい生息環境の検討、古環境推定の指標とすることなどのために採集されたものである。

2)外国産化石類
 この標本類は、津田禾粒先生が昭和48年(1973)から昭和49年(1974)にかけて、ナイジェリアのイバダン大学の招聘教授の時に採集された、ナイジェリア北東地域から産出した白亜紀後期のアンモナイト類や貝類と、イギリス南部のハンプシャー盆地周辺の中生代ジュラ紀後期のアンモナイト類、腕足類、貝類化石、イギリス西部のカーディフの中生代三畳紀産のアンモナイト化石を中心とする。

3)国内産化石標本類
 この標本類は富山県八尾町産の貝類化石と、新潟県新津産を中心とした貝類化石に分けられる。県内産の標本は、マングローブ沼の指標となる化石類が最も多産する八尾町柚ノ木・掛畑・井栗谷(葛原)の貝類化石と、やや寒冷期の指標となる化石類が多産する深谷の貝類化石である。時代は前者が新生代第三紀中新世中期(約1,600万年前〜1,500万年前)で、深谷のものは鮮新世前期(1000万年〜800万年前)を示す。
 新潟県産の標本は新津・難波山(能生町・名立町)から産出した中新世中期の貝類化石である。しかしながら、この標本類に関しては、産地について正確なデータが得られず、標本自体の保存状態が良くないために、残念ながら今回の収蔵目録からは除くことにした。

B)書籍類
1)雑誌(古生物学会誌他)
 地学雑誌、地球、地質学雑誌、石油技術協会誌、日本古生物学会報告記事、岩石鉱物鉱床学会誌、新生代の研究、化石、地すべり、アフリカ研究等多岐に渡る分野の学会誌等である。

2)別刷論文
 国内外の969名の研究者から津田禾粒先生の所へ送られた論文の別刷である。内容は古生物・一般地質・岩石鉱物・地質構造・年代測定等多岐にわたり、時代も古生代から新生代までの各地質時代にわたっている。
 古生物分野に関しては、貝類を中心とした動物化石、植物化石、生痕化石のように分野も広範囲である。

3)単行本
 「Illustrated Handbook of Japanese Paleogene Molluscs(日本の古第三紀の軟体動物の図解ハンドブック)」など国内外の地質関係書籍である。

3.津田禾粒先生の略歴

津田禾粒(1925-1995)

住所 新潟県新潟市寺尾上1-5-8

大正15年1月1日富山県上新川郡大沢野町岩木新43番地にて誕生
昭和20年3月富山高等学校高等科文科乙類卒業
24年3月京都大学理学部地質学鉱物学科卒業
26年2月同   大学院退学
26年3月新潟大学理学部助手として勤務
43年6月同   教授
48年4月同   教養部教授
48年11月ナイジェリア国イバダン大学招聘教授(10ヶ月)
60年11月新潟大学学長
平成4年1月新潟大学退官
7年12月30日逝去

著 作(論文)102編
代表作は次のとおり
昭和18年郷土の地質.富山高等学校尋常科報國團誌「剱」,13号,8-16
昭和30年八尾層群の堆積環境について−いわゆるGreen tuff地域の中新統に関する堆積環境の研究(その1)−.地質学雑誌,第61巻,532-542
昭和61年Mangrove Swamp Fauna and Flora in the Middle Miocene of Japan.(共著)日本古生物学会特別号,第29号,129-134


富山市科学文化センター
最終更新 市川 2002.01.21.
Copyright(C)1997-2002 Toyama Science Museum, TOYAMA (JAPAN) All rights reserved