今月の話題(岩石)
新しいエネルギー資源
メタンハイドレート

No.231
 石炭や石油など地下から取り出されるエネルギー資源は、それらを使い尽くしてしまった時のことが心配されています。またそれらが燃えた時出される硫黄酸化物や炭酸ガスが、地球の環境を汚していることも心配されています。今、クリーンで危険性のないエネルギーを求めて研究が続けられています。

 そんな中で、新しいエネルギー資源が注目されています。それは、海底の堆積物中に含まれる「メタンハイドレート」です。海底の堆積物中に含まれる水の分子にメタンが大量に溶け込んで氷の様になっているというのです。化学的な計算によると、体積で氷の百数十倍のメタンガスを含んでいると見積られています。これは大陸の移動や地球環境の変動などを研究するために行われた多くの海底のボーリングの結果、近年になって発見されてきたものです。

 メタンハイドレートは、海面下500mより深い海底下の堆積物中で、陸上から流れてきたり海水中から沈殿した動植物の死骸や糞などからバクテリアの分解によって発生したメタンが高い圧力で水に溶け込んで氷状になったものです。このような条件が揃った海底の堆積物中では、今でもメタンハイドレートが生成されていると考えられます。

 メタンは、燃えて炭酸ガスと水を生成するだけで、硫黄酸化物などの有害なガスを放出しないので、石油や石炭などに比べてクリーンなエネルギーであるといわれています。日本でも1995年から、石油に代わる次世代のクリーンなエネルギー資源として、日本列島周辺の海でメタンハイドレート鉱床を開発する政府と民間による共同研究が始められています。世界的にみて、利用できるメタンハイドレートは炭素換算で10兆トン以上という試算があります。これは、現在知られている石炭・石油などの全エネルギー資源の埋蔵量に相当します。

 人類は、近い将来また一つ莫大な量の「新しいエネルギー資源」それも「かなりクリーンなエネルギー資源」を手に入れることになるでしょう。その時、それをどのように使うべきか?私たち自身がよく考える必要があるように思います。


(赤羽久忠)
1997.06.01

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