今月の話題(気象)
フェーン

No.218

暖かい冬の一日

 低気圧や台風が日本海にあると、気温が上昇し乾燥した強い南風の吹くことがあります。これをフェーンといいます。

もともとはヨーロッパ・アルプスで山を越えて吹く暖かくて乾燥した風のことをいいました。

今年の2月14日、一年中でいちばん寒い頃なのに富山では南風が吹いて最高気温は18.3℃になりました。これはふつうの

年の4月下旬の最高気温にあたります。この日の天気図を見ると、日本海北部に前線をともなった低気圧があることがわ

かります。この低気圧に向かって南から暖かい空気が流れ込みフェーンとなってこの暖かさがもたらされたわけです。

最も暑かった夏の一日

 今まで日本でいちばん暑かったのはどこだと思いますか?それは意外にも、富山より北にある山形です。昭和8年7月25日
のことで40.8℃を記録しました。この時は日本海に台風があり、暖かい南西の風が飯豊(いいで)・朝日連峰の2,000m級
の山を越えフェーンになったものでした。 ちなみに富山の今までの最高気温は39.5℃、高岡市伏木で平成6年8月14日に
記録しています。この日は台風14号が黄海を北上中で強い南風のもとフェーンになり気温が上がりました。

フェーンのしくみ

 ところで、フェーンの時はどうして気温が上がるのでしょう? 空気には水じょう気がふくまれています。その量には気
温によって決まる限度があり、気温か高くなるほど多くなります。 そして、これ以上水じょうき気をふくめない状態を飽
和(ほうわ)といいます。飽和をこえた水蒸気は水になり、このとき熱を出します。 今、乾いた空気(飽和していない空
気)のかたまりがあり、これが、まわりからの熱の出し入れがない状態で上昇するとします。
 このとき空気のかたまりの気温は、1,000mにつき10℃のわりあいで下がっていきます。反対に1,000m下りると10℃上がる
ことになります。一方、飽和した空気のかたまりが上昇するときは、水蒸気から水に変わるときの熱をもらうので気温の下
がるわりあいは乾いた空気よりも小さく1,000mにつき5℃です。

 さて、高さが2,000mの山があって風上の地上に飽和状態の空気があるとします。これが上昇すると気温は下がり、よぶん
の水蒸気は雨に変わります。このとき気温は1,000mにつき5℃の割合で低くなります。ということは、この空気が山の頂上
まで上昇すると気温が10℃下がることになり、風上の地上で20℃の時、頂上では10℃になります。
 頂上に達したとき、よぶんの水じょう気がぜんぶ雨になって降っていたとしたら、空気は乾いているので下りる時、気温
は1,000mにつき10℃の割合で上がり、風下の地上では30℃になります。結果として気温は10℃高くなったわけです。
 風上で雨が降っていなくてもフェーンのおきることがあります。このことについては次の機会にまたお話いたしましょう。

(吉村 博儀)

1996.05.01

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