No.220
富山湾の中央から西部や能登半島にはきれいな砂浜が広がっていますので、夏休みには海水浴に出かける方も多いと思います。ひと泳ぎして、砂浜で休む時、波打ぎわを見て下さい。大きさ1.5センチまでの白や薄黄色の三角形の二枚貝が砂の中から出たり、入ったりしているのが見られるでしょう。よく「アサリの子供」などと思っておられる方が多いと思いますが、これはフジノハナガイという名前の貝です。
フジノハナガイは面白い習性をもっています。波が寄せたり、引いたりするのにあわせて、砂の中から現われて、しばらくすると砂に潜っていくのが見えます。まるで、波と遊んでいるようです。
この貝の動きを注意深く観察していると、この貝がたいへん波を上手に利用していることがわかります。
この貝は波打ち際が好きですが、波打ち際は潮の満ち引きによって、変化します。次のページの絵のように潮が満ちる時は陸側へ移動したいので、波が押し寄せるとき、砂から出て、波の力で陸の方へ動き、潮が戻る前に砂に潜ります。潮が引く時は、沖合いの方へ移動したいので、波が押し寄せる時は砂に潜っていて、波が戻るとき戻るくとき顔を出し、波の力で、深い方へいきます。この貝は潮が満ちたり、引いたりする時の、かすかな振動や水の流れを感じて動き方が決まるようです。
夏、海へ行ったついでに貝殻を集めてみましょう。また、どのような種類が多いか調べてみましょう。富山湾や能登半島には700種類ほど有りますが、特に多いのはフジノハナガイ、その他ヒメカノコアサリ、カバザクラガイ、マツヤマワスレガイ、サルボウガイ等の砂浜の貝に混じって、波消しブロックに多いムラサキイガイやカキ等も多く見られます。
(布村 昇)
1996.07.01