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今月の話題:No.1
暖かくなって海辺へ出かける機会が多くなりました。磯は日頃見慣れない生き物がいっぱいすんでいますが、その中で最もグロテスクなものはアメフラシではないでしょうか。アメフラシは褐色に白い斑点のある20cmから40cmに達する動物で、春には海面下の岩の上をのっそり歩いているのがふつうに見られます。
グロテスクなアメフラシに触れる気などしない人もいるでしょうが、もし強く押したりしていじめますと、紫色の汁を一面に出す性質があります。この紫色のしるが海水中をモクモクとちょうど雨雲が広がっていくように見えるので、この名があるのでしょう。
動物には、全て雄と雌の区別があるわけではありません。雄と雌の区別がない、すなわち一つの体に卵と精子ができる動物は以外と多いもので、アメフラシもその一つです。春になると産卵しますが、卵の固まりはふやけたラーメン上で「ウミソウメン」と呼ばれています。
アメフラシは巻き貝の仲間ですが、貝殻は退化して小さくなり、柔らかい体の中に埋まっています。背中側から触ると、それが分かります。 ■
発行:昭和53年4月