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今月の話題:No.12
せっけんは、私たちの生活にとって、なくてはならないものの一つです。私たちが、浴用やせんたく用に使っているせっけんは、ウシやヤシ油などの食用油とカセイソーダというアルカリ性の薬品から作られたものです。
体やせんいについたアカや油を落とすためのせっけんが、油から作られているというのは、おもしろい話だと思いませんか。せっけんが油よごれを落とすことができるわけは、一つ一つの分子にひみつがあるからです。せっけんの分子は図のように、油になじみやすい部分と、水になじみやすい部分からできていて、水に溶かすと、たくさんの分子が水になじみやすい部分を外側に向けて集まり、小さな粒をつくります。この小さな粒と油よごれが出会うと、図のように、油よごれをせっけんの粒の中に包みこんで取り去っていくと考えられています。せんたくについて言えば、手でもんだり、洗たく機で水流を作ってやると、この動きが強められるようですが、せっけんや洗剤の量を必要以上に多くしても、この働きは強くならないようです。
さて、せっけんはいつごろから使われ始めたのでしょうか。正確な記録はないのですが、一世紀ごろにはヨーロッパの一部で使われていたようです。当時のせっけんは、ヤギの油と木の灰から作られていたようです。
では、日本ではどうだったのでしょう。日本にせっけんが入ってきたのは安土桃山時代で、ポルトガル人によって初めて紹介されたということです。そのころは、物を洗うというより、薬用やシャボン玉作りに珍重されていた程度のようです。また、シャボンという呼び方は、ポルトガル語sabãoからきているようです。
日本で工業的にせっけんが作られ始めたのは、明治に入ってからで、その後生産量もどんどん増えました。しかし、酸性の水やカルシウム分などが多く入った硬水ではせっけんの働きが悪いという欠点や、原料として食用油を多く使うなど欠点があります。その欠点をおぎなうものとして、昭和34年ごろから合成洗剤がしだいに普及し始めました。現在、浴用や洗面用をのぞいて、ほとんど合成洗剤が使われていますが、これには環境を汚染する問題があり、再びせっけんが見なおされてきています。■
発行:昭和54年3月