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今月の話題:No.13
今年の冬は暖かい日がつづき雪はあまり降りませんでした。また、3月の降水量は平年の40%しかありませんでした。このままでは、夏の水不足が心配です。そこで、今回は雨の降るしくみをお話ししましょう。
まず、雨の本拠地というべき「雲」の中を見てみましょう。雲の中には、大きさがおよそ0.005〜0.1ミリの雲粒と呼ばれる水の粒が、1cm3あたり100〜1000個の割合で含まれています。ぽかり浮かんでいる雲の中で、雲粒はじってしていなくてもいつも落ち続けています。しかし、その速さがたいへんおそいので、地表へ落ちる前に蒸発してしまいます。ところで、雲の高さが10000メートルにもなると、気温がたいへん低く、雲粒は「氷晶」と呼ばれる小さな氷の結晶になります。この氷晶は下の過冷却した雲粒(0度以下になっても水のままでいる)でできている雲の中に落ちてくると、雲粒から水蒸気をうばってどんどん成長して雪になります。地上付近が寒いと、そのまま雪として降ってくるのですが、暖かいと、とけて雨になって降ってきます。
このように、氷晶がもとになって降る雨を「氷晶雨」といいます。また、「冷たい雨」とも呼ばれています。
ところで、雲粒は小さいとなかなか大きくなれません。そのため落ちる速さがおそいので雨にはなれません。ところが、たとえば海塩の小さなつぶを核にした雲粒はすぐに大きくなります。雲の中にこのような大きい雲粒があらわれると、おちる速さが速いので小さい雲粒を吸収してどんどん成長し雨となって降ってきます。
このように、雲粒だけの雲から降ってくる雨を「冷たい雨」に対して「暖かい雨」といいます。
「暖かい雨」は、おもに熱帯や亜熱帯地方で降ります。日本ではふつう「冷たい雨」が降りますが、夏の間は「暖かい雨」が降ることもあります。■
発行:昭和54年4月