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今月の話題:No.15
つゆに咲くあじさいの花。あじさいは、植えてある場所によって、青や赤紫、虹色というように、いろいろな色の花を咲かせます。また、赤く咲いた花が途中で青く変わったり、その逆だったりすることもあります。このため、あじさいの花は、七変化する花として知られています。あじさいの花の色がどうして変わるのか、その秘密をちょっと見てみましょう。
私たちが絵をかくとき、たとえば青い色と赤い色をぬるときは、別々の絵の具を使わなければなりません。けれども、あじさいは、花びら(花びらに見えるのは本当はガクなのです)の色が青の時も紅のときも、中にある絵の具(これを色素といいます)は同じなのです。ということは、一つの色素が青にも赤にも、自由に変わるということです。たいへん便利な絵の具ですね。この色素には、デルフィニジン配糖体というむつかしい名前がつけられています。これと同じような性質を持つ色素は他の赤や青色の花、紅葉、リンゴの皮などにも入っており、これらの色素をまとめてアントシアン類と呼んでいます。アントシアン類は水に溶けやすく、溶液が酸性だと赤く、中性では紫、アルカリ性では青く変わります。
しかし、実際のあじさいの花では、紅色のときは酸性、青色のときはアルカリ性になっているということはなく、どちらの場合も酸性だということが調べられています。ということは、あじさいの花が青くなるとき、アントシアンを青くする何かが働いているわけです。この働きをするものは、水に溶けたアルミニウムだろうということが何人かの学者によってわかってきました。これは、赤い花よりも青い花の方が、10倍ぐらいも多くアルミニウムを含んでいることや、アルミニウムが溶けた水、例えばうすいミョウバン水などであじさいを育てると、ミョウバン水が濃くなればなるほど、青い花がたくさんつくという実験などからわかってきたのです。
青いあじさいは、酸性の強い土に咲くといわれています。それは、土の酸性が強いと土の成分の一つのアルミニウムが土に溶けやすくなり、これが根からたくさんすいあげられて花を青くするのだと考えられています。■
発行:昭和54年6月