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今月の話題:No.16

七夕

夏の星といえば、まず思いうかぶのが7月7日の七夕祭りでしょう。星の伝説に夢をたくし、願いごとを書いたたんざくを竹の枝につるして行われる星祭りは、今から1200年前にとなりの中国から伝わったものです。

ところで、7月7日といえばまだ梅雨の最中で、ほとんど星が見えない時期です。かりに晴れていても、天の川は東の空に低く、七夕の星もあまり見ばえがしません。ではなぜこのような時に星祭りを行うのでしょうか。それは昔の暦(旧暦)と今の暦(新暦)の間に約1ヶ月位のずれがあるからなのです。旧暦は今の暦のように正確ではなかったので、七夕の日を今の暦にあてはめてみると8月上旬のこともあれば、下旬になることもあります。

昔の俳句の歳時記をしらべてみますと、七夕は秋の部類に入っております。たとえば芭蕉の句に「七夕や秋を定むる夜のはじめ」とよんだのがありますが、七夕をむかえる頃になると、日中は暑くても夜の空気は涼しくなって秋の気配が感じられることを表しています。立秋が8月7〜8日頃ですから昔の人たちは星を眺めながら季節のうつり変わりをよくとらえていたと思われます。

このようなことから考えると、今の暦では1ヶ月おくれの8月7日の方が本来の七夕に近いことになります。また、この頃になると天候も落ちついており、天の川も高く昇っていますので、おりひめとけん牛の星がよく見えます。

七夕のお話では7日の夜に、けん牛は一年一度だけ天の川を渡って、おりひめに逢うことができることになっているのですが、実際の星の世界ではおりひめ星の光が地球にとどくのに26年。また、けん牛星の光は16年かかって私たちの目にとどいています。おたがいの距離はけん牛が光の速さで走っても、おりひめのところに行くのに17年かかる位はなれています。月のない夜、街あかりの少ない郊外へ出ると、天の川とその西と東に光る七夕の星が美しく眺められます。物語を想い出して夏の夜のひとときをすごすのも楽しみなことでしょう。■

文:倉谷
発行:昭和54年7月


富山市科学文化センター
作成 藤田 2001.9.24.
最終更新 市川 2001.12.27.
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