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今月の話題:No.18

浮いたり沈んだり

古代ギリシア時代、シラクサという国の王様が、金の王冠を職人に作らせました。王様は、職人が王冠にまぜ物をしたかどうかを知りたいと思い、アルキメデスという学者に、王冠をこわさないで調べるよう命じました。アルキメデスは、どうしたらその命令を解決することができるかをしんけんに考えていました。ある日、風呂に入った時に、とつぜんその解決法がひらめきました。あまりのうれしさにそのまま風呂からとび出して、街中を「エウレカ(わかった)、エウレカ」と言って走りまわりました。

その解決法というのは、王冠と同じ重さの純金のかたまりと、王冠をそれぞれ水に沈めます。もし王冠にまぜ物が入っていると、こぼれる水の量が、純金を沈めた時よりもたくさんになるはずです。同じ重さなら、まぜ物が入った王冠は体積が大きくなるからです。実際にためしてみると、王冠を沈めた方がたくさんの水がこぼれ、アルキメデスは職人のごまかしを見破ったということです。

この時、アルキメデスは、≪水中の物体は、その物体と同じ体積の水の重さと同じ大きさの力を、上向きに受ける≫という“アルキメデスの原理”を発見したと言われています。この上向きの力を浮力と言い、重い物体でも水中では軽くなります。

浮力が変わると浮いたり沈んだりすることを利用して遊ぶおもちゃに“浮沈子”があります。図のように、大きなビンに水をいっぱい入れた中に、小さなビンに少し水を入れて、さかさにしてやっと浮いてくるようにします。水を手のひらで強くおさえると、小さなビンは沈み、力を抜くとまた浮いてきます。

沈んでいく小さなビンを観察すると、中の空気の体積が小さくなっています。これは、手の圧力が水に伝わり、小さなビンの中の空気を圧縮するからです。その結果、小さなビンの浮力が小さくなり沈んでいくのです。■

文:黒田
発行:昭和54年9月


富山市科学文化センター
作成 藤田 2001.9.24.
最終更新 市川 2001.12.27.
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