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今月の話題:No.23
雪のふりしきる冬は、街や野山のほとんどの木々が葉を落とし、陸上の植物を見るかぎり、さびしい季節です。しかし、海の中は、海藻がさかんに成長していてたいへんにぎやかです。今月は、たくさんの海藻の中から、お正月のしめ飾りなどに使われているホンダワラのお話しをしましょう。
ホンダワラのなかまは世界中で150種、日本でも60種あり、小さなものは40cmくらいですが、大きなものは10mに達するものもあります。しめ飾りに使われているホンダワラはまっ黒になっていますが、生のものは、黄土色ないし茶色をしています。
それでは、からだのつくりなどはどうなっているのでしょう。一般に海藻は、コンブやワカメのようにたいらで茎や葉の区別がはっきりしませんが、外見上根、茎、葉の区別ができます。しかし、そのはたらきは陸上の植物のものと同じではありません。特に、根は水や養分を吸収したりせず、ただ単に体が流されないように岩にしがみつくはたらきをするだけです。
ところで、ホンダワラはどのようにしてふえるのでしょうか。5月〜6月ごろ海辺に打ち上げられたものをよく見てみると、体の先の方に細長い棒のようなものがついています。ホンダワラは、この部分で卵や精子をつくります。そこで成熟した卵は受精したあと海中へ放出されます。ここからホンダワラの一生が始まります。放出された卵は海底に沈み、そこで細胞分裂をくり返しながら夏を過ごし、大きくなっていきます。秋を迎え、だんだん寒くなるにしたがってさらに大きくなり、冬にはもっとも大きくなります。そして春になるとまた卵や精子をつくり、それらを放出して一生を終わります。卵や精子を放出したホンダワラの多くは体の途中で切れたり、岩から流れて流れ藻となります。流れ藻となったホンダワラには、ブリやサンマなどが卵を産みつけます。流れ藻は、卵からかえった小魚の安全なかくれ場所となるのです。■
発行:昭和55年2月