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今月の話題:No.24

春の女神 ギフチョウ

ギフチョウをごぞんじですか。4月の中旬、天気の良い日に、近くの野山に出かけてみましょう。林の木々はまだ葉を落としたままで、明るい日差しが地面まで十分に差し込んでいます。そこにはスミレなどのなかまやカタクリ、ショウジョウバカマなどの花が咲いています。

運が良ければ、黒と黄色のしまがだんだらになったはねを持ち、はねを広げると5cmほどのチョウが、これらの花を訪れるのを見ることができるでしょう。これがギフチョウです。

ギフチョウの成虫は春早く、ソメイヨシノの花が咲くころに現われます。春早くに現われ、その姿が美しいので、「春の女神」とも呼ばれています。成虫が現れる季節には、木々はまだ葉を広げず、林内には光が差し込み、カタクリやスミレのなかまなどの早春季植物と呼ばれる草花が成長し花をつけています。これらの花蜜を吸うためにギフチョウが訪れます。また、ギフチョウの幼虫が食べるカンアオイのなかまの植物も春のうちに急速に成長します。カンアオイのなかまの葉の裏に産み付けられた白くてまんまるい小さな卵からふ化した幼虫は、その葉を食べて成長し、1ヶ月ほどでサナギになります。

そのころには、木々の葉が伸びて光をさえぎり林床が暗くなり、花も見られず、またカンアオイも成長をやめてしまっています。そしてギフチョウは、サナギまま枯葉の下で夏をすごし、秋をすごし冬をすごして翌春再び成虫となって飛び出します。このように、ギフチョウは春から初夏にかけての短い間に活動的な時期を終えてしまいます。

このような生活の周期を持つギフチョウは、落葉広葉樹林の林床で春の短期間に成長し、花をつけ、そして散ってしまう早春季植物にうまく対応していて、落葉広葉樹林の周期によく合ったチョウだと言えるでしょう。

ゆっくりギフチョウをごらんになりたい方は、科学文化センター2階・自然史展示室の「森の昆虫」のコーナーへおいでください。その「コナラ林」の所にオス・メス一対が展示してあります。■

文:根来
発行:昭和55年3月


富山市科学文化センター
作成 八田 2001.9.24.
最終更新 市川 2001.12.27.
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