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今月の話題:No.27
巣をつくる魚「トゲウオ」。自然史展示室「川の生き物」のコーナーには、このトゲウオの一種トミヨが泳いでいます。今月はトゲウオのなかまの「トミヨ」と「イトヨ」についてお話ししましょう。
トゲウオのなかまは、名前から想像できるように、背や、腹にひれが変形したトゲをもつ魚です。富山県には、湧水地帯にすむトミヨと、いつもは海にいて卵を産むときだけ川をさかのぼるイトヨの二種のトゲウオがいます。トミヨは背に9本ほどのトゲがあるのに対して、イトヨは3本なので区別できます。
トミヨは北海道から日本海ぞいに福井県まで分布し 富山平野では、黒部川や神通川・庄川・小矢部川などの湧水地帯にすんでいいます。中でも、庄川が流れる高岡市中田地区の湧水地帯は、トミヨが数多く生息し、富山県の天然記念物にしていされています。最近は、住宅の増加や農地整備などでトミヨの生活場所である湧水地帯が少なくなってしまいました。
トミヨの産卵期は2月から8月頃ですが、6月が最も盛んな時です。この頃には、オスはなわばりをつくり、あらゆるものを追い払います。また、オスの体色も変化し、黒っぽくなります。イトヨの方はあざやかな赤味をおびますが、このような繁殖期の体の色を婚姻色とよんでいます。巣はオスが水草の破片でつくります。
トミヨはたるのような形の巣を水面近くにつくるのに対し、イトヨは泥の上にくぼみをつくり、直接その上に巣をつくります。巣ができあがり、なわばりに卵をもった腹の大きなメスが近づくと、オスはジグザグダンスをくり返し、巣にさそいこんで産卵させます。メスは卵をうむとすぐ立ち去りますが、オスはひれで新鮮な水を巣に送り、卵に酸素を供給したり、近づいてきた他の魚を追い払って卵や子供を守ります。
イトヨの産卵期は4月から6月頃で、この頃には富山湾にそそぐすべての河川にのぼってくると考えられています。富山市内でも、浜黒崎の小川などでその姿をみることができます。■
発行:昭和55年6月