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今月の話題:No.36

ツバキ

科学文化センターの自然史展示室の入り口には、原始の森を再現したジオラマ“照葉の森”があります。このジオラマの中には、いろいろな植物が模型で展示してありますが、その中に、赤い花をつけた低木が2、3本生えています。これは、富山市の“市の花木”にも選ばれているツバキです。

ツバキには、いろいろな園芸品種が知られていますが、これらは、日本に昔から生えているヤブツバキとユキツバキをもとにつくりだされました。ヤブツバキは、西南日本に広く分布していますが北へ行くにしたがって海岸近くにだけ生えるようになります。太平洋側では、福島県あたり、日本海側では、新潟県あたりまで海岸沿いに連続して生えています。それより北でも点々と生えており、自生地の北限は青森県の夏泊崎です。一方、ユキツバキは、ヤブツバキとは逆に、山地帯、特に日本海側の多雪地帯を中心に分布しています(図1)。

ヤブツバキとユキツバキ違いは、分布している地域だけでなく幹の生え方や花のつくりにも違いが見られます(表1)。

ところで、ヤブツバキとユキツバキはどうしてこのような分布のしかたをしているのでしょうか。ユキツバキの花のつくりや葉の特徴などを調べてみると、ヤブツバキより古い特徴を持っています。また、ユキツバキの分布が日本海側の多雪地帯であることから次の様に考えられています。氷河期の間に起きた何回かの気候の変化によってユキツバキの祖先は、雪に埋もれて冬を越すようになりました。その後氷河期も終わり、気温が上昇するにつれてユキツバキは日本海側の多雪地帯にだけ生える様になりました。一方、ヤブツバキは気温が上昇するにしたがって分布を北に広げ、現在のような分布のしかたになったと考えられています。■

文:数井
発行:昭和56年3月


富山市科学文化センター
作成 藤田 2001.9.24.
最終更新 市川 2001.12.27.
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