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今月の話題:No.37

カタクリ

科学文化センターの自然史展示室には、「照葉の森の生活」というコーナーがあります。このコーナーには、縄文時代の人々が海や山で採集し、食べていたと考えられる植物や動物が展示してあります。この中にきれいな花の写真と白く細長い球根があります。

この花と球根は、これから紹介するカタクリの花と球根です。カタクリの球根には、たくさんのデンプンが含まれているので、昔の人は、この球根を集めて食料にしていたと思われます。

今でも、料理やお菓子の原料として使われているカタクリ粉も本来はこの球根をすりつぶし、水でさらしてつくられたものですが、現在のカタクリ粉はほとんどジャガイモのデンプンで作られています。

野山に生えているカタクリの球根を集めてカタクリ粉を作っていたのでは効率が悪くてとてもやっていけないのでしょう。

カタクリの花は茎の先端につき、うつむきかげんに咲き、薄ピンク色の6枚の花びらにはW型の模様が見え、その付近でそりかえっています。葉は地面から直接出ていますが、その下には茎が2、30cm位伸び、その先端に平たいラッキョウのような形をした球根がついています。このため、カタクリ全体を途中で折らないよ様に掘り出すのにはなかなか骨が折れ、たいていの場合、途中で切れてしまいます。昔の人も球根を掘るのには苦労したことでしょう。

ところで、カタクリは、ユリ科の多年性草本で、日本各地の丘陵地や山地の林床によく生えています。本州の中部以北に多く分布していますが、四国や九州にはあまり多くありません。

カタクリは、雪どけとともに地上に葉を広げ、富山では4月から5月頃に花を咲かせます。6月の終わり頃には、実を結び、葉は黄ばんで枯れてしまいます。カタクリの様に、春早くから初夏にかけての短い期間に一年の生活を終えてしまう植物を早春季植物と呼んでいます。

最後に、カタクリのきれいな花を見る時は晴れた日に出かけないと見られません。というのは、雨の日や曇りの日には花びらが完全にそり返らず、半分位しか開かないからです。■

文:数井
発行:昭和56年4月


富山市科学文化センター
作成 藤田 2001.9.24.
最終更新 市川 2001.12.27.
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