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今月の話題:No.39

ゼフィルス

チョウの中にミドリシジミとよばれる仲間がいます。彼らのオスの多くが、緑色や青色に輝くはねを持っています。たいへん美しくキラキラ輝くので数多くのチョウの中でも人気があります。

チョウの愛好者は、このミドリシジミの仲間をゼフィルスとよんでいます。ゼフィルスとは、ギリシャの西風の神ゼフィロスに由来する名前で、ミドリシジミの属名(*1)としてむかし使われていました。(今はネオゼフィルスという属名に変わりました。)それで、ミドリシジミの仲間の全てをゼフィルスとよぶようになったのでしょう。

ゼフィルスは世界じゅうで110種ほど、日本じゅうでは24種が知られています。富山県内では、今のところ18種のゼフィルスが知られています(*2)。それらのうち、ヒサマツミドリシジミは最近になって、県の北端部でみつかったものです。同じころ新潟県の南端部でもみつかっていて、その場所が、ヒサマツミドリシジミの分布北限となっています。

ミドリシジミの仲間の一生は互いにたいへんよく似ています。

成虫は一年に一度だけ梅雨の季節に現れます。きびしい冬は卵で越します。春、幼虫のエサとなるブナやミズナラ、コナラなどの木々の芽がふくころに幼虫が卵からかえります。幼虫は木の芽や若葉を食べて大きくなります。6月の末ごろにはサナギになり、6月から7月になると成虫が羽化してくるのです。彼らのメスは卵を木の芽のつけねや、小枝のまたの所などに産みつけます。卵はそのまま、夏、秋、冬とすごすのです。こうしたミドリシジミの仲間の一生は、彼らのエサである落葉広葉樹の一年の周期にたいへんうまく合っているのです。■

(*1)ミドリシジミを学名で書くと、Neozephyrus taxila(ネオゼフィルス・タキシラ)となり、そのはじめの部分のNeozephyrusが属名です。taxilaは種小名といいます。

(*2)18種の名前を記しておきます。ウラゴマシジミ、ウラキンシジミ、ムモンアカシジミ、ウラクロシジミ、アカシジミ、ウラナミアカシジミ、オナガシジミ、ウラミスジシジミ、ミズイロオナガシジミ、ウスイロオナガシジミ、ミドリシジミ、アイノミドリシジミ、メスアカミドリシジミ、ヒサマツミドリシジミ、エゾミドリシジミ、オオミドリシジミ、ジョウザンミドリシジミ、フジミドリシジミ

文:根来
発行:昭和56年6月


富山市科学文化センター
作成 奥野 2001.12.27.
最終更新 市川 2001.12.27.
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