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今月の話題:No.47

熱電素子

 理工展示室の電気と熱のコーナーに、熱電素子の実験装置があります。この装置を正面から見ると下図のように見えます。

 金属板と透明プラスチック板にはさまれた、たて・よこ3cm、厚さ5mmの小さな電気部品が熱電素子です。

 この熱電素子には、電気を流すと一方の面があたたまり、反対の面が冷えるという、たいへんおもしろい性質がありあす。しかも、電気のプラスとマイナスを入れかえて、電気の方向を逆にすると、あたたまる面と冷える面が入れかわるのです。

 展示室で使っている熱電素子の温度をはかって見ると、室温19.5℃のとき、あたたかい方の面は34.5℃、冷たい方の面は5℃でした。このとき熱電素子には、3ボルト/アンペアの電流が流してありましたが、この電流をもっと大きくすると、両方の面の温度差も大きくなります。

 さて、この熱電素子はどんなところに利用することができるでしょうか。

 熱電素子の特徴は、小型で軽く、電気を流すだけで簡単に物を冷やすことができるという点で、機械や電気製品などの一部分だけ冷やしたいたいときなど便利です。また、これをいくつか組み合わせて冷蔵庫を作ると、今までのような機械的な冷却機がいらなくなり、振動や音の全く出ない静かな冷蔵庫を作ることができます。ただし、熱伝素子は、まだ値段が高いので、その利用は、一部に限られているようです。

 最後に、熱伝素子の原理を簡単に説明しましょう。熱伝素子のはたらきは、ペルチェ効果という現象にもとづいています。これは、1834年にペルチェという人が発見したもので、二種類の金属の両端を図−2のようにつなぎ、電気を流すと、その接点の部分で熱を発生したり吸収したりする現象です。

 熱伝素子は、このペルチェ効果の効率を高めるため、一方の金属をビスマスとテルルという金属から作られる特殊な半導体に置きかえてあります。


熱電素子実験装置 ()内の温度は室温19.5度のとき

 

文:朴木
発行:昭和57年2月1日


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