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今月の話題:No.49

火星

 このごろ、夜がふけると東の空に赤く輝く星が目につきます。

 これは地球のおとなりの星、火星です。この惑星は図のように地球の外側の軌道をまわっていますが、お互いの起動の関係で、2年2ケ月ごとに地球に近づきます。今回(1982年)は、4月5日に最も近くなりますが、距離はざっと9500万キロメートル。火星は地球に比べて直径で2分の1の星ですが、この時の見かけの大きさは、角度で14.7秒。もう少しわかりやすく言いますと、満月の直径のざっと130分の1。つまり130倍の望遠鏡でみると、火星は月ほどの大きさに見えることになります。

 今度(1982年)の接近では、火星はその北半球をこちらに向けております。北半球の季節は夏から初秋をむかえていますが、今は、極冠と呼ばれる白く輝く北極地方の氷が、とけて縮小して行く様子や、表面の暗色模様の変化を観測するのに良い機会です。赤い火星の模様は、初めて望遠鏡で見る方にはあまりはっきりしませんが、北極地方の極冠は小型の望遠鏡でもわりあい良く見えます。

 火星世界には、かつてH・G・ウェルズの小説に登場した火星人のような高等生物が住んでいるのではないかと考えた人もいましたが、そんな夢もマリナーやバイキング探査機によって生き物の住んでいない世界であることが明らかになっています。やはり太陽系内で生き物の住んでいる星は地球だけなのでしょうか。


接近前後の火星と地球の運行

火星のみかけの大きさの変化(天体望遠鏡で見た状態で、北が下になっている)

接近のころの火星面

H.G.ウェルズの「宇宙大戦争」に登場する火星人

文:黒田
発行:昭和57年4月1日


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