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今月の話題:No.50

フキノトウ

 フキの花茎をフキノトウと呼んでいます。淡い黄緑色のりん片に包まれています。のどかな春になると、かたく包んでいたりん片がほころんで、花茎が長く伸びて花が咲きます。キク科の特徴である小さな花が集まった頭状花、つまりタンポポを小さくしたような花がいくつも開きます。

 花は全般にうすい黄白色ですが、ちょっと注意して見ると、白っぽいものと、黄色っぽいものとがあります。白っぽいものは、花茎が長く、これが雌花です。また、少々紫色を帯びることもあります。黄色っぽいものは、雄花で花茎が短いのが普通です。フキノトウは地下茎からいくつも出ますが、雌花のフキノトウと雄花のフキノトウは株が別です。いわゆる雌雄異株で、キク科植物としては珍しい存在です。

 普通、キク科植物は、雌雄同株で、しかも1つの花にめしべとおしべがある、いわゆる両性花です。フキノトウも、一見めしべとおしべのある両性花のように見えますが、はたらきの面で雌花と雄花の区別がはっきりしています。

 雌株の頭状花には、2種類の小さな花がいくつもあります。1つはめしべの先が2つにまたをなしています。これが雌花です。もう1つは、あとで述べる雄花と同じ形をしていますが、花粉を出しません。はたらきを失った花です。雄株の頭状花には1種類の小さな花がいくつもあります。よく見ると、筒状にくっつき合ったおしべと、先がとがっためしべがあります。しかし、このめしべは実を結びません。おしべの筒の中を伸びながら、おしべがはき出した花粉を集めて、外へ押し出す働きをしているのです。筒から外に押し出された花粉は、虫によって雌花のめしべに運ばれて受粉します。また、同じキク科の花も変わったつくりとはたらきをしています。たとえば、同じ花でもおすの時期とめすの時期があります。自然界は不思議です。これもあわせて観察してみましょう。

文:長井
発行:昭和57年5月1日


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