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今月の話題:No.54
「月見ればちぢにものこそかなしけれ、我が身一つの秋にはあらねど」…百人一首にもうたわれているように、秋という季節に月はなぜか味わい深いものです。古来から月にまつわる行事も多くあります。お月見はその代表的なものでしょう。
お月見は旧暦の8月15日に満月を観賞する行事で、この満月のことを「中秋の名月」といい、今年(1982年)は10月1日にあたります。中国から伝わった行事で、日本では909年に醍醐天皇が初めて行ったと伝えられています。そのころは和歌を作ったり、楽器をひいたりしました。ススキやハギ等の秋草を飾ったり、月見だんごをお供えしたりするようになったのは、江戸時代に入ってからです。お月見のころはちょうど農作物の収穫期にあたるので、サトイモ・ナス・クリ・カキ等をお供えしました。そこで、「中秋の名月」のことを「いも名月」とも呼んでいます。月見だんごも地方色豊かで、丸くて白い満月のような形が一般的ですが、さといものような形にしたものやお彼岸につくるおはぎを供えるところもあります。
月にまつわる行事は「中秋の名月」以外にもあります。「中秋の名月」から約1ヶ月たった、満月より三日前の月を観賞する風習があります。これを「後の月」と言います。2回もお月見をするのは少し変ですが、日本古来のお月見がこの「後の月」で「中秋の名月」があとで割り込んできたという考えもあります。「後の月」より1ヶ月近くたった十日月の夜を「とうかんや(十日の夜の意味)」と言います。群馬県のある地方では子供達が「とうかんや、とうかんや」と声をあげながら、束ねたわらで家の庭を叩くという風習があるそうです。その他、「月待ち」と称して、夜中近くに上る二十三夜の月を皆で飲み食いしながら待つという行事もあります。これを記念して、石塔「二十三夜塔」が建てられているところもあります。
ところで、お月見というと月の模様を思い浮かべます。日本では「うさぎのもちつき」が有名ですが、世界各地に伝わる月の模様をまとめてみました。皆さんも本当の月で想像をめぐらしてみてください。
お月見 |
発行:昭和57年9月1日