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今月の話題:No.56

冬の使者「オオハクチョウ」

 純白なハクチョウの到来は、私たちに冬のおとずれを知らせるかのようです。

 ハクチョウといえば、公園の池などで見かけるものを思い浮かべる人が多いと思いますが、これは、くちばしの付け根にこぶのあるコブハクチョウで、ヨーロッパで古くから人間が飼い慣らした種類です。冬鳥として日本にやってくるハクチョウは、体重12s、羽を広げると2mにもなるオオハクチョウと、それよりやや小型のコハクチョウです。コハクチョウは、図のようにくちばしの黄色の部分がオオハクチョウよりも少ないのが特徴です。また、オオハクチョウに比べ数も少なく、オオハクチョウの群れにまじってやってきます。

 ハクチョウは、10月下旬から11月上旬にかけ、大きな群れで北海道に飛来し、その後本州にも渡ってきます。北海道の風蓮湖(ふうれんこ)、青森の大湊湾(おおみなとわん)、宮城県の伊豆沼(いずぬま)、新潟県の瓢湖(ひょうこ)などが飛来地として有名です。

 富山県にも数は多くありませんが、オオハクチョウが毎年やってきます。コハクチョウの方は時々やってくる程度です。昨年(昭和56年)の第一陣はコハクチョウで、11月2日に6羽が砺波市の庄川で羽を休めていきました。オオハクチョウが毎年定期的に来て越冬する池としては、富山市山本の田尻池が知られています。昭和46年から毎年10羽程が来ています。昨年(昭和56年)は12月3日に5羽がやってきて、その後9羽が加わりました。昭和39年から46年にかけては富山市栃谷の大沢池に、多い時は34羽もやってきていましたが46年にほ場整備のためにうめたてられてしまいました。

 田尻池にやってきた最初の頃は、池のすみにかたまり、車や人間が通ったり、上空を飛行機が飛んだりすると、首をピンとのばし警戒しましたが、慣れてくるとのんびり泳ぐようになりました。白いオオハクチョウにまじって灰色の子供のハクチョウも見られます。水中に首をつっ込み浅瀬にはえる水草の葉や茎を食べています。一冬を田尻池で過ごしたオオハクチョウたちは、3月には北の空へ飛び立っていきます。

文:南部
発行:昭和57年11月1日


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