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今月の話題:No.280

火星

 今年の夏は、南の空に赤い明るい星が見えます。ときには月のすぐそばに見えることもあり、ひときわ明るく輝き、すぐに見つかります。この星は火星です。6月22日に地球に約6740万kmまで近づき、現在はしだいに離れつつあります。

火星と地球の位置関係
図1.火星と地球の位置関係

 火星は地球のすぐ外側をまわっている惑星で、直径が地球の約半分しかありませんが、太陽系の星の中では、もっとも地球の環境に似た惑星です。2年2か月ごとに地球に近づきますが、火星は楕円の形で太陽の周りをまわっていますので、年によって接近する距離が異なり、今年、2003年、2005年は特に地球に近づきます。ですから、今年の夏は火星を見るチャンスの年にあたります。富山市天文台では毎週木、金、土曜日の午後7時半から行う観測会で火星を見ることができますので、ぜひおいでください。

 火星は昔から赤い姿をしているので「戦いの神様の星」として考えられました。20世紀初めには火星に見える黒い模様が火星人の造った運河ではないか、火星には地球よりも高等な生物がいるのではないかと一部の人が主張しました。SF小説にも数多くとりあげられ、火星には生物がいるかもしれないという期待がありました。1965年にはアメリカの火星探査機マリナー4号が火星に達し、表面の様子が撮影されました。しかし、そこには月と同じようなクレーターがあり、運河のようなものは全く見ることができませんでした。1976年にはバイキング号が火星に着陸し、微生物がいるかどうかの実験をくり返しましたが、残念ながら、生物がいる証拠を見つけることはできませんでした。その後も何度も探査機が向かい、くわしく分かるようになってきました。南北の極には極冠と呼ばれる、ドライアイスや氷が積もった所があり、クレーターや26,000mにもおよぶ巨大な火山、4000kmにもわたる長い渓谷などがあることがわかりました。

 1996年には驚くべきニュースが世界をかけめぐりました。火星から地球に落下したと考えられる隕石に36億年前の生物の痕跡を見つけたというものです。その証拠として3点があげられ、

  1. 微生物が死滅した後にできるPAHと呼ばれる有機物が見つかった
  2. 細菌が造る可能性が高い、磁鉄鉱が見つかった
  3. 35億年前の地球の生物の微化石と似ている微化石らしいものが見つかった

というものです。これに関し、今も論争がくり広げられています。

 1997年にはアメリカの火星探査機マースパスファインダーが火星表面に20年ぶりに着陸しました。自分で動く小型探査車「ソジャーナ」を使って周辺の岩石などをくわしく調べた結果、丸い石があることから火星には昔、大洪水があったことがわかりました。また、火星の表面の温度は高い時でもマイナス14度にしかならないこともわかりました。

石を探査するソジャーナ(提供:NASA)
図2.石を探査するソジャーナ(提供:NASA)

では、水も凍ってしまうような低温で大洪水はどうして起こったのでしょうか? 火星は昔はもっと暖かであったことが第一の要因です。さらに火星の地下に水が多くあり、その上を永久凍土と呼ばれる、土と氷が交じり合ったものがふたをしていると考えられています。何らかの原因で永久凍土に割れ目が生じ、地下に隠された水が噴水のように噴き出てきて、大洪水を引き起こしたのではないかと考えられています。さらには、火星には太古の昔、海があったと考える人もいます。 火星には多くの謎が秘められています。みなさんも火星の姿を見ながら、火星の様子を想像して見てください。■

部分月食をみよう

7月5日(木)の夜半前から月の一部が地球の影に隠される部分月食が見られます。 肉眼でも充分見ることができ、双眼鏡などで観察するともっと美しく見ることができます。欠け始めは午後10時35分、部分月食の最大は午後11時55分、月食の終わりは午前1時16分です。最大で月の直径の半分が隠されます。肉眼で見ていますと、半影の影響で欠け始めの時刻以前に欠けているように見えます。富山市天文台では午後10時から午後12時まで観測会を行いますので、夜おそいですが、おいでください

付属富山市天文台 〒930-0155 富山市三熊49-4 Tel 076-434-9098

文:渡辺 誠
発行:平成13年7月


富山市科学文化センター
作成 市川 2002-02-11
最終更新 市川 2002-02-11
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